第3章 彼について
「…」(ヤバい人…だけど…そんなに…なのかな…。)
自惚れてはいけないと思うが、"私"だから危害を加えられていない気がする。
「…!」
テレビが付いており、ニュース番組がやっていた。
「昨夜未明、北海道札幌市で45歳の女性が殺害されるという事件が起こりました。」
「…」(普通の人は…こうやって人を殺害したら逮捕されるん…だよね…。)
私は彼の後ろ姿を見つめた。煙草に火を付け、頬杖をついてテレビを見つめている彼。
「…あの…。」
「…」
「…私の…家はどうなるんですか……?着替えとか…必要なものとか…。」
働いているので会社にも行かないといけないし、住んでもいないアパートの家賃を取られたらお金を溝に捨てているようなものだ。
「…家はこっちで処理する。必要なものは家に揃ってる。」
「え…。」
「…」
彼は立ちあがり、別室へ向かった。私もその後を追いかけた。部屋は全部で3部屋あるらしい。リビングと私の写真が貼られている部屋、それと作業部屋。紘太さんの仕事をする部屋らしいのだけれど、ここには入ったことがない。
「…!」
私の写真が貼られている部屋にクローゼットがあった。そのドアノブを引くと、着替えがびっしりハンガーに掛けられていた。
「これ…は…。」
「アンタに着てもらうために揃えた服と下着。」