第3章 彼について
「…ふぅん…。」
よくわからないが、彼がだいぶ"ヤバい人物"だというのがわかる。
「もし告げ口なんてしてみろ…あの人に地獄の果てまで追われて殺されるに決まってる…!」
「…でもリョウはなんでそこまで知ってるの…?」
「いや…俺じゃなくても裏の世界の奴らは皆知ってる…東雲さんは近づいたらヤバいって…。」
「…」(確かに…オーラはある…。)
「女子供でも容赦なく殺すんだぞ…?璃乃は無事かぁ……?」
「…」(死んでます……。)
私はスマホで時間を確認した。
「!…ごめん、もう行かないと…。」
時刻は14時50分。
「え、もう?もうちょっといいじゃん!」
「無理…!じゃあこれお金、またね!」
「ちょっ…おい…。」
私は急いでお店から出た。家まで早歩きで帰った。
*
「…た…ただいま…戻りました…。」
相変わらず薄暗い部屋。靴箱の上にあるデジタル時計を確認すると14時59分。
「…はぁ…。」(ギリギリセーフ……。)
玄関で靴を脱いでいると彼が目の前に立った。
「!…」
「…」
私の首元に顔を近づけ、匂いを嗅いだ。
「…」
「…?」
「…なんも…ねぇ…か。」
彼はリビングに戻っていった。