第10章 溺愛
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イチさんとシュウさんが後処理を終えるまでコウちゃんと車で待っていた。
「コウちゃん…。」
「…悪かった。」
「!…どうしてコウちゃんが謝るの…。」
「…」
「…コウちゃん?」
暗くて顔がよく見えない。
「…まだ施設にいた頃。」
「!…」
「…あの男は、俺が大嫌いだった施設の奴の息子だ。」
「!…」
「まぁ、アイツは俺と会ったこともねぇし、俺のこと知ってるわけねぇけど。」
「…」
「施設では、何をするにも作業だった。遊ぶのも、食事も…。」
「…」
「そんな中、12歳になったガキ共には1時間の外出許可が降りた。そんとき俺は、菜月と会った。」
「…うん。」
「施設から帰る途中、親無しだとか、兄貴が自殺して可哀想だとか言われても何も言わずにただ歩いてる菜月見て、最初は外見が可愛いとしか思わなかった。」
「…ありがとう。」
「…きっとその時からだろうな。俺はもう一目惚れしてたんだよ。」
「えっ…。」
「その次の日、また菜月を見た。今度は友達とニコニコ笑って歩いてた。俺と同じ親無しなのに、お前が特別に見えた。弱い俺とは違って、お前が強く見えた。」
「…そんなことないよ…。」
「…人間ってさ、自分にねぇもん欲しがんだよ。俺にねぇもんを、菜月は全部持ってる気がした。」
「…」
「フッ…変な惚れ方だろ?」