第10章 溺愛
普段より断然低い声が聞こえた。イチさんの表情は少し引きつっているし、男性も掴まれた頭が相当痛かったのか、悲鳴混じりの声をあげていた。
「!…」
「やっぱり…あの時見逃したのはコウさんの判断ミスですかね。」
「だってよ、コウちゃん。」
「!…」
足音が聞こえ、イチさんの後ろからコウちゃんの姿が見えた。
「…」
「でも、菜月ちゃんが嫌がるから殺さなかったんだもんね〜?」
「…ん。」
コウちゃんは彼の横を通り過ぎ、私の目の前に立つと、私をそっと抱きあげた。
「コウちゃん……ごめん。」
「…」
「てことで、殺しは私の担当ではないので、イチ、よろしくお願いしますね。」
「はーい。」
「なっ、何するつもりだ!!やめろ!!」
「山小屋だからどれだけ大きな声出しても誰にも届かないよね〜。やりやす〜い。」
「!…や、やめろ!!!」
「!…」
コウちゃんが私の目を片手で塞いだ。その間に男性の悲鳴と生々しい音が聞こえた。