第10章 溺愛
「すみませーん。」
ドアをノックする音が聞こえる。
「!…」(シュウさんにイチさん…。)
「チッ……誰だよ…。」
彼はカッターナイフをしまい、私に背を向け、ドアを開けた。
「はい?」
「あ……やっぱりいましたね。すみません、その女の子、私の友達の彼女さんなんです。返してくれませんか?」
「あ!いたいたー!」
「!…シュウさん…イチさん…!」
顔を少し傾け、男性の横から私を覗いたイチさん。
「チッ…アンタら、なんでここがわかったんだよ…。」
「GPSがあるので。」
シュウさんはニコリと微笑み、スマホの画面をゆっくり振って見せた。
「こ、コイツは渡さねぇぞ!俺と結婚して、ずっと一緒に暮らすんだよ!!」
「何子供みたいなこと言ってるんですか。」
「う、うるせぇ!とにかく出てけよ!俺は…」
「はぁ……いい加減にしてくれませんか?コウさんに怒られるのは私達なんですよ。」
「は、はぁ!?アンタら…何言って…」
「だから…」
シュウさんは男性の頭を鷲掴みにした。
「いい加減にしろって言ってんだよ。」