第9章 あなたの為ならば…
*
「これで終わりかな…。」
最後の湿布を貼り終えたところで、ドアが開いた。今度こそ、コウちゃんが帰ってきた。
「お、おかえりなさい。」
急いで救急箱を閉じて、棚にしまった。
「ん…。」
靴を脱いで私に近づいてきた瞬間、目を見開いた。
「……どうした?その傷。」
「あ…えっと……はは…っ…ちょっと…転んじゃって…。」
「…んなわけねぇだろ。」
私の腕を掴み、上から下まで体を見つめた。
「っ…い、痛いよ…。」
「…何があった?」
「な…何も…。」
「…」
コウちゃんは私をそっと抱きしめた。
「…教えて。」
「!…」(なんで……コウちゃんがそんなにつらそうな声出すの…。)
初めて聞いた。コウちゃんの辛そうな声。
「…嘘…ついてたんだね。」
「…何が?」
「…前に言ってた女の人…殺したって言ってたのに…生きてたよ。」
「…ん。」
「…家に来て…その人に暴力振るわれただけ。」
「……ん、わかった。」
コウちゃんは一言そう言い、謝るわけでもなく私を離した。