• テキストサイズ

バイオハザード(Take my hand)

第1章 迷い人


買い物を終わらせ自宅への道を歩いていると、カバンの中に入れてあるスマホが鳴る。

「もしもし」
「もしもーし」
「なんか用?」
「……いや、暇だったから電話した。あとは………調子どうかなって思ってさ」

電話の向こうの男の声に少し苛立つ。

「お前がウチの有給を申請したんだろ!」
「なんだ、気づいてたのか?」

悪戯に笑う男にスマホを握る手の力が強まる。

「余計なことするな!」
「余計なことじゃなくて必要なことだ。これは医者として選択した結果だ」
「ウチはまだ働ける。有給なんて必要ない」
「……お前は何をそんなに焦ってるんだ」
「別に焦ってない」
「いいやお前は焦ってるよ。大人しくしておけたったの2週間だろ?」
「もういい」

問答無用で通話を切って、止めた足をまた動かす。

……

マンション入り口を見ると、金色の髪の男性が誰かを待っているのかキョロキョロと辺りを見ている。そんな彼の姿に顔を顰め足を止めると、自然に気づいたのかこちらを目をやる。

「……」
「……」

横を無言で通り過ぎる直前話しかけられ足が止まる。

「おい」
「何」
「大丈夫なのか」
「…………」
「どうしてあの時言わなかった。俺もそこにいた、だから俺にも責任がある。だから……」
「伝えなかったのは、お前のことが嫌いだからだ。お前がウチを嫌っているようにな」

冷たく言い放って歩き出す相良の後ろ姿を見ながら、男は悔しげに奥歯を噛んでいた。

/ 7ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp