第1章 迷い人
どこかただならぬ様子にウェスカーに声をかける。
「ない!どういうことだ」
愕然と呟く声にこちらまで不安になる。
「ないって、どういうことですか?」
「アンブレラ社はあるか?」
「アンブレラ?そんな会社はないですよ。聞いたこともないですねえ」
「何、日本にはないのか」
鋭くなる声に肩をすくめる。
「すみません。わからないです」
落ち込んでいると頭の上に手が乗る。
「いや、気にするな」
顔を上げると無表情にこちらを見るウェスカーと目が合った気がした。
「…………」
「…………」
「どうした、大丈夫か」
「ウェスカー、サングラス外してみて」
「……ああ」
サングラスを外したウェスカーと目が合った瞬間、思わず簡単な声を上げた。
「…………綺麗ー」
ウェスカーのアイスブルーの瞳を見つめながらぎゅっと彼の服の裾を握ると、何故か体を振るわせるウェスカー。
瞳を見つめて数分、急に自分の名前を呼ばれて顔を向けるとジルが手を振っていた。