第2章 指名
彼女に興味を持ったのはそれだけでは無い。
「虹の呼吸 参ノ型 月環(げっかん)」
聞き慣れない呼吸だったが、振り下ろされる刃が弧を描き、本物の月の様に燐光を放つと同時に真っ直ぐに鬼の喉元を貫いたのである。
二人揃って目を奪われたあの剣技は、そう易々とモノにできるものではない。
その場で名を聞けなかったものの、虹の呼吸という特徴的な呼吸から該当者を割り出すのには、そう時間はかからなかった。
◆◆◆
数日後。
「虹の呼吸かぁ…」
「村田、何か知ってるか…?」
義勇は同期の村田と定食屋に居た。
「うーん、何か聞いたこと有るんだけどなぁ…」
塩サバ定食をつつきながら、頭を捻る村田がそう言えばと呟く。
「丙の隊員が使っていた気がする」
「丙?」
義勇は大好物な鮭大根を飲み込んでから聞き返した。
「あぁ、珍しい呼吸の使い手だし、可愛い女の子だし、結構有名人だよ。えっと名前は確か…」
「虹ヶ丘 華恋」
「そうそう!って錆兎。いつ来たんだ?」
村田が問う。