第2章 指名
いつもの事だが、通常の人ならば、まず、真っ先にどうして水柱が二人なのかを尋ねられる。
何かの折りに、双方の実力が拮抗していて強くなった方向性の違いから、推挙されたことを知ってもどうせ何かしら本部に斡旋してもらっているのだろうと邪推されてきた。
「………」
何だろう?
この雰囲気、私何か気の障ること言ったかな…?
それとも、甲隊士に良い印象がないのかな?
「それに比べて…お前の技は美しかった…」
唐突に義勇が呟いた。
どうやら論点を変えたいらしい。
あの日、月明かりのない朔の夜に…
艶やかに鬼を狩った華恋の姿が瞼の裏から離れない。
任務帰りに二人で立ち寄った小さな村で異能を使う鬼を意図も容易く屠って見せた彼女の姿が………
でも実際その日に華恋に話しかけた訳ではないのだから、今日が初対面だと彼女が錯覚するのも無理のない話であるのだが。