第4章 日常
昼餉の折にしのぶの所に遣いに出した華恋の鴉(那由多♀)が戻ってきた。
「早いね。那由多(なゆた)」
「文?」
錆兎が首を傾げる。
「さっきしのぶの所に遣いに出したんです。お疲れ様、那由多」
「しのぶ……あぁ、胡蝶か」
「あぁじゃないですよ、しのぶはカナエさんの継子だし、もう甲なんですよ?」
「胡蝶姉はまあ強いとして、しのぶの方は鬼の頸、斬れないだろ?」
錆兎の言っていることは事実だ。
しのぶは体が小柄だから腕力が無く、鬼の急所である頸が斬れない。
そのために鬼を倒す為の手段として、鬼に効く毒を開発しているらしい。
とはいえ、今日しのぶに文をしたのは髪を切るためであって、鬼の首を斬るためでは無い。
ようは単なる世間話だ。