第3章 同居
そう言って、冨岡が華恋に巾着を渡す。
「これは?」
「食費が入っている。それで、必要な材料を買って来てくれ」
「あ、はい」
そういうことでしたか。
ぼんやりしてるようで、実はしっかりしてるんだなぁ、冨岡さんって。
◆◆◆
八百屋前にて
「すみません、芋と人参と玉ねぎを下さい」
「はい、いらっしゃい。あれ?その巾着…」
八百屋のおじさんが巾着を見て話しかけてきた。
「はい?」
「あんた、あのお兄ちゃんの妹かい?ほら、シュッとした優男だよ」
これは冨岡さんのことかな?
「えっと同僚で…」
「へぇ、美男美女だね。あ、もしかして今流行りのカフェーの給仕かい?」
「カフェー?」
「洋風喫茶店さ。だが、違うのかい?」
「ああ、はい。私たちは熊追いです」
「熊?女の子でもやれるのかい」
「はい、これでも五体倒してますよ」
「そうかい、頑張んな。お兄ちゃんとも上手くいけば良いね」
おじさんに目配せされた。何故?
「?、はあ」
少々歯切れの悪い返事をしながら華恋は野菜に目を向ける。