第11章 理由なんてないわ
新一side―
会場の扉を開けると父さん達が駆け寄ってきた。
「新一、どこに行ってたんだ。探したんだぞ」
「父さん、警察に連絡して!こいつらが悪い奴らに捕まってたんだ!」
「どうやって逃げてきたんだ?」
「え、このお姉さんが……」
と振り返るとそこにお姉さんの姿はなかった。
「あ、あれ?さっきまでそこにいたんだ!」
「ホントよ!助けてくれたの!」
「そうよ!」
蘭と園子も口々にそう言う。父さん達は顔を見合わせる。
「……ひとまず捕まってた部屋に案内してくれるかい?」
父さんと俺の2人で部屋へ向かう。
「ホントなんだって!嘘じゃない!」
「嘘だとは思っていないさ。あの子たちの目も腫れていたし……何より手首に縛られた跡があったからね」
お姉さんがもしかしてその部屋にいるかも……と思ったけど、そこには倒れた男達しかいなかった。
「警察には……」
「母さんに頼んださ。もうすぐ着くだろう」
父さんは部屋の中を見回す。
「新一、ここであったことを説明できるか?」
「当たり前だよ!」
「もちろん、助けてくれた女性のこともだよ」
「え……でも、お姉さんは……」
「きっとこいつらの仲間ではないだろう……わざわざドアを蹴破っているからね。でも……良い人だとも限らない」
確かに最初は疑った。お姉さんも悪い奴かもしれないって。姿が消えたのもそういうことかもしれない。
―無事でよかったね
そう言って微笑んでくれた彼女を信じたかった。
後日、警察から連絡があり、例の男達は人身売買に関わっていたらしい。それを聞いてゾッとした。お姉さんがいなかったらあの2人は……。
でも、お姉さんのこともわからないまま。今回のパーティは知り合いにだけ招待状を送ったらしいが、誰も彼女のことを知らなかった。会場内で見かけた人というは何人かいたけど、素性を知ってる人は1人もいなかった。
「新一、その女性には感謝しきれないが一つだけ言っておく」
「……なに」
「もしこの先、その女性に再開するとしても味方であるとは限らない。次は敵かもしれないからな」
「わかってる……でも、お礼言うくらいならいいよね?」
「もちろん」
いつかまたどこかで会えるだろうか……いや、絶対会える。理由なんてないけどそんな気がした。