第111章 交わる銀色※
妙な明るさに意識が浮上していく。数回瞬きをしてからゆっくり目を開いた。
『……ん?』
目に映る景色に覚えがない。体を起こして部屋を見渡してみるが、本当に知らない場所だ。壁も天井も床も、今私が寝ていたベッドも全て真っ白。シーツに散らばるジンの髪は綺麗に映えているが。
ふと、そこで違和感を覚えた。私の左右から伸びる銀髪に。
油が切れたように動きが悪くなった首を右側に向ける。そこにはまだ眠っているジンがいる。意味があるのかわからない深呼吸をして、今度は左側に首を向ける。
『……は?』
左側にもジンがいる。
頭がショートしそうになって逃げるようにベッドから降り、その光景を見つめた。目を擦っても頬をつねっても見える景色は変わらない。
ジンに完璧に化けられる人間なんていただろうか。というか、この状況を作り出すメリットはなんだ?
とりあえずジンを起こしてみるしかないだろう。たぶん会話をすれば偽物もわかるはずだし。
意を決して再びベッドに戻る。そして、それぞれの肩に手を伸ばしてそっと揺すった。
『ねぇ、起きて』
そう言うとそれぞれ反応があって安心しつつも警戒を強める。それぞれの瞼が動き、それが見開かれる。
『っ?!』
直後、ものすごい力で左右の腕を掴まれ引っ張られた。ギリギリと掴まれた場所が痛む。このまま引っ張られ続けたら関節が外れそうだ。
それぞれに視線を向けてみるも、お互いを睨みつけて様子を伺っている。
『ちょっ、痛いんだけど……!』
「離せ」
「てめぇがな」
『ねぇ、ほんとに!』
叫ぶように訴えると若干だが力が緩んだ。その隙に腕を振りほどいて手を擦り合わせた。痺れていて指先が少しビリビリする。
「何者だ」
「そのまま返す」
一触即発の空気にため息をつく。ジンもこの状況を理解していない事はわかった。
『喧嘩しないでよ。今それどころじゃないんだから』
1つ目はこの部屋について。昨日は自室で眠りについたはずだ。鍵はかけていたし、もし仮にそれを開けられたとしても連れ出されれば嫌でも目を覚ます。それ以前に私より警戒心の強いジンが気づかないわけないのに。
2つ目は2人いるジンについて。起こして様子を見てみたがどちらも本物にしか見えない……分裂なんて有り得るんだろうか。
こんな状況を誰が何のために?考えても答えなんて出てこない。