第108章 カイピリーニャは甘すぎる #2 ※
『……予想以上に早い再会だったわね』
「……そうだな」
パーティに潜入する当日。準備のためピンガのいるホテルへ向かう。合流してすぐお互いに微妙な表情を浮かべた。
『とりあえずメイクしましょうか。女の顔でいいのよね?』
「ああ」
そう言ったピンガに女の顔のマスクを作っていく。今回はグレースの顔は使えない。何かあった時にその顔を覚えられてしまったら困るから。でも、今日は女性の姿で行くように指示を受けたらしい。私の前で見せた振る舞いだけでは完璧でない可能性があるから、今回のパーティで他の女性の姿を見て修正させるような感じ。
『よし、できたわ』
リップを塗り終え、鏡を見るように促す。ピンガは何度か角度を変えて確認した後、大きくため息をついた。
『何よ、気に入らなかった?』
「……別に」
そう言って立ち上がるピンガに肩をすくめた。
『それじゃあ着替えておいて。私の支度が終わったら出るから』
「……スーツでいいんだよな」
『ええ。あ、でもドレスがいいなら着ていいわよ。大きめのやつも持ってきたし』
「んなの誰が着るか」
線が細いとはいえドレスを着れば体のラインがわかる。ピンガならストールで肩周りを隠して長めのドレスなら誤魔化せる気もするけど。
ぱぱっとメイクを終わらせて着替えるためにドレスと取り出す。
「おい、それなんだ」
『え?……ああ、これ?大袈裟にやられただけよ。大した事ないから大丈夫』
ピンガが言うのは私の腕に巻かれた包帯の事だろう。派手に動かせば少し痛むけど、基本的には問題ない。
「お前みたいな女でも怪我するんだな」
『どういう意味よ』
「気でも抜いてたって事か?」
『違うわ。これは……事故みたいなものよ』
昨日組織の研究室に呼ばれた。用事を済ませて帰ろうとした時、上の方の棚から物が落ちてきて……それが直撃しそうだった研究員の1人を咄嗟に庇って代わりに私の腕に当たったというだけ。
それを話すとピンガは呆れたように笑った。
「お前馬鹿なのか?なんでそんなの庇うんだよ」
『別にいいじゃない。すぐそばにいて助けられそうだったから助けただけよ』
「へぇ」
『自己満足なのはわかってるつもりよ。手を伸ばして助けられる人は助けたいし困ってるなら力になりたい。そう思うのはおかしい事?』
「……本当に変な女だな、お前」