第105章 足りねぇんだろ?※/ジン
箱に巻かれた鎖と複数の鍵。しかも、南京錠なんて易しいものじゃない。
「何してる」
背後から聞こえたジンの声に振り返る。そして震えそうになる声で聞く。
『ジン……この中身って……』
「入ってたままだが?」
『じ、冗談じゃない!これ取って!捨てるから!』
「いいじゃねえか、そのままで」
『よくない!あんなのもうごめんよ!!』
「元はと言えばお前が悪いだろ」
『そうだけど……!』
「どうせまた使うんだ。置いとけ」
『絶対嫌!!』
いつからか部屋の入口に立ち尽くしているウォッカに言った。
『ウォッカ!これ取って!』
「おいウォッカ、そんなことしたらどうなるかわかってるよな?」
『ウォッカ、私の言葉が聞けないって言うの?』
「2人とも勘弁してくだせえ……」
……ちょっと可哀想な気もしたけど、そんなこと言ってられる程余裕のある状況じゃない。こっちはこっちで必死なんだから。
数分の言い合いの後、ウォッカはジンに従った。私はジンを睨む。
『しばらくしないから』
「言ってろ」
『本当に本当にしないからね!!』
「あの……俺……」
ウォッカが気まずそうに呟いた。その声にジンと私は
「『いなくていい』」
「あ……それでは失礼しやす……」
ウォッカはおずおずと出ていった。ドアが閉まるのを確認してまた向き直る。ジンはタバコに火をつけた。その様子を睨みながらそのタバコを取り上げて灰皿に押し付ける。
「……何のつもりだ」
『その言葉そのまま返すわ』
また新しいタバコを取り出そうとしたけど、今度は箱ごと取り上げる。
「……返せ」
『あの箱返してくれるならね』
「チッ……」
『え……』
ジンは諦めたのかソファーに座り込んだ。ジンがタバコを諦めるって……そんなに大事?
『……本当に駄目?』
「心配しなくても、お前が俺を怒らせなきゃ使わねえよ」
……要はお仕置とか拷問とか、そういう目的用ってこと?とりあえず怒らせなければOK?でもジンの怒る原因ってよくわからないしなぁ……。
何にせよ、この先不要な物はすぐ捨てる。そう心に決めた。
『とにかく、もう最低でも1週間しないからね』
「ほう……やってみろ」
そんなこと言ったものの……3日後、ジンの手を拒みきれずにあっさりと抱かれるなんてこの時の私は知らない。