第105章 足りねぇんだろ?※/ジン
ある日、任務を終えて部屋に戻ると、そこにはいつも通りのジンの姿……いつも通り?いや、だいぶ不機嫌……。
『……ただいま』
「……」
無言……だけど、別のことを言われる様子もない。だから、そのままシャワーを浴びに行った。
バスルームを後にして、部屋に戻る。濡れた髪を拭きながらテレビをつけようとした。
「……いつも途中で飛ぶから、お前はそれでいいんだとおもってたんだがな」
急に背中に声をかけられて振り返る。話の筋が全くわからない。
『ん?何の話?っ……!!』
ジンが腰掛けているベッド。シーツの上に散らばった物を見て背筋が凍った。
クローゼットの奥の方に、わざわざ箱に鍵をかけてまで隠していた……所謂大人の玩具。
「自分で慰めてたか?」
『ちっ、ちっ、違うっ!!』
「……どうだかな」
『本当に違うの!!ていうか、鍵ついてたでしょ?!どうやって開けたのよ?!』
「南京錠ごときなんてことねえ」
確かにつけてたのは鍵1本で開けられる南京錠。ちょっと開けやすいか……?なんて思ったけど、そもそもジンがクローゼット開けることなんて滅多にないし、それで大丈夫だと思ったのに……。
『今は使ってないから!』
「今は?」
『あっ……えっと、その……』
「言え」
『……任務で、そういう趣味の男相手にする時、使われることあったから……その、予行練習というか……』
ラブホテルなんかに行くと、場所によってはなかなかハードな玩具が置いてある。感覚を知るためにまず1つ、その後いろんな種類があることを知って、その度に買っていたらいつの間にかこんな量に。
もうある程度体験したし、必要なくなったから処分しようと思ってはいたけど、タイミングを逃して逃して……結局捨てられないまま。
「……最後に使ったのは?」
『えっと……』
「これか?」
『なっ……それどこからっ?!』
「てめぇが1番よくわかってるだろ」
ジンが手に持ってるローター。ちょっとだけムラッとする時があって、1番手早く処理できるのがそれで、いちいち片付けるのが面倒だから、これだけ下着の入ってる棚の奥の方に入れてたのに。
「これは使ってるんだな?」
『……』
ここまでくればいくら否定しても無駄……だから、小さく頷いた。
「足りてねえなら使ってやるよ」
『えっ……や、やだっ!!』