第99章 次は必ず
「どーも、降谷さん」
パソコンを睨みつけている降谷さんに声をかけると、数回の瞬きの後に視線が合わさった。
「……新一君。今日来る日だったか」
「ずいぶんお疲れですね。コーヒーでも飲みに行きませんか?」
「……風見だな」
「少しでもいいから休ませてくれって言われちゃって。降谷さんが休まないと他の人も休めないんですよ」
「ああ、そうだな……少し抜ける。何かあったら連絡してくれ」
降谷さんと一緒に部屋を出てすぐ、閉まった扉の向こうから小さな歓声が聞こえた気がした。
「いらっしゃいませ……あら、新一君に降谷さんも!お好きなところへどうぞ」
梓さんに言われてカウンターの席に腰を下ろした。美味しいコーヒーが飲めて落ち着ける場所といったらポアロがまず上がる。アイスコーヒーを2つ注文してやっと息をつく。
黒ずくめの組織の壊滅作戦から2年と少し。奴らを潰した事で世界中の裏社会のバランスは大きく崩れた。芋づる式に出てくる情報も重要人物の名前もかなり多く、やはり巨大な組織であったのだと改めて思い知らされた。
俺もその作戦に関わった者として時々呼び出される事がある。今日もそれで警察庁に顔を出し、その帰りで風見さんに降谷さんを休ませるように頼まれた、というわけだ。
「何日寝てないんですか?」
「……昨日、2時間寝た」
「全然足りてないでしょう?薄らくまができてますよ」
「……」
「まだ見つからないんですか?」
「ああ。3人とも全く」
探しているのは全員組織の幹部。あの作戦の数ヶ月後にラムとボスは捕まった。が、逃げ出した者もいる……ベルモットだ。作戦中、俺を庇って撃たれた。その治療の為に警察病院に運ばれたのだがいつの間にか姿を消していたらしい。
それから、ジン。一向に動向が掴めず、目撃情報もない。ラムもジンの事は知らないと言うばかりだ。
もう1人は、マティーニ。
窓から落とされたあの時。灰原が持ってきたボール発射ベルトのおかげで俺と降谷さんは助かった。直後、俺達のいた階から爆発音と共に炎があがった。喉が裂けるくらいに叫んだのも、灰原の泣き声も……最後に亜夜さんが笑った顔もまだ頭に残っている。
死んだ可能性が高い。でも、遺体は出なかった。生きている……いや、生きていて欲しいという願望に近いかもしれない。