第97章 忘れられないように※
無理だ。涙がぽろぽろ零れてきて止まらない。ジンの指が何度も頬を拭ってくれる。
「泣かせたいわけじゃねぇんだが」
『っ……だって、嬉しい、から……』
言葉に詰まりながらもそう返すと、ジンは優しく笑う。そして、触れるだけのキスをされて見つめあった。
「で?」
『な、なに……?』
「お前の返事を聞いてねぇ」
『う……』
ジンが私の耳を弄りながら言う。くすぐったくて身を捩るけど、腰を掴んだジンの手が逃がしてくれるはずもない。
「……俺だけか」
『違う……!その、恥ずかしいし……』
罪悪感のせいで言いづらいのもあるけど、今まで言ってこなかった分、改めてはっきり伝えるのは恥ずかしい。
「おい……」
『ちょっと待って……心の準備が……』
「必要ねぇだろ」
『あるの……』
止まった涙を拭い、目を閉じて数回深呼吸をする。心臓がバクバクうるさいし、顔も熱い。恐る恐る目を開いてジンと視線を合わせる。小さく息を吸い込んで、気持ちを言葉にした。
『……好き』
「……」
『ジンの事、好きだよ……大好き』
「……」
『私の、全部あげるから……』
「……」
『な、なんか言ってよ……!』
こっちは必死で思いを口にしてるのに、ジンは何も言わない。まずい事を言ってしまったのかと不安になってまた泣きそうになる。
「ああ……たまらねぇな」
ジンはそう言ってまた唇を重ねて深く舌を絡めてきた。ゆっくり身体がベッドに倒されていく。入れたままだったジンのモノが抜かれて身体が震えた。そしてまたゴムの袋を破る音が聞こえる。
『まだするの……?!』
「誘ったのはてめぇだろ」
『そうだけど、もう……』
「全然足りねぇ」
『う……あっ……』
気持ちよさにシーツを強く握り締める。が、ジンの手が手首を撫でてきてくすぐったさに力が緩む。そして、ジンの指が私の指に絡む。抽挿が始まって無意識に手に力が入っていく。
「亜夜」
『っ……』
耳元でジンが私の名前を呼んだ。頭の中まで溶けるみたいだ。幸せすぎておかしくなりそう。
『ジン、好き……大好き……!』
快楽を受け止めながら気持ちを言葉にしていく。たった一晩で今まで伝えなかった分に届くとは思わない。だからこそ、伝えなきゃ。
もしかしたら、もう二度と抱かれないかもしれないから。