第10章 対面
『もしもし、終わったわ。これから戻る』
「流石ね、早くて助かるわ」
あの日以来、単独での任務が増えた。だけど、取引ではなく情報収集……所謂、ハニートラップ。
初めのうちは、知らない男に好き勝手されるのは吐き気がしたけど、回数を重ねるごとにその感覚も鈍っていった……にしても、自分本位のヤツばかりで気持ち良さの欠片もない。
『……やっぱりジンがいいな』
なんだかんだ言いながらちゃんと前戯からやってくれたし、何より本当に気持ちよかったから……。
ジンにいろいろ教え込まれたから、男の喜ぶやり方はわかってたし、そのおかげで情報もすらすら出てきたけど……1回口に出された時は本気で殺意が湧いた。
ジンとはアジト内で顔を合わせることはあっても、軽い挨拶を交わすくらいでそれ以外の接触はない。一度離れると決めたけど、本当は近くにいたい。でも、それをまた拒絶されるのが怖い。
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―なんとなくでいいから、ね?
『そう言われてもなあ……』
たまたま嫌な感じがした人がスパイだっただけなのに……正直、まだ何人かそういう人いるし。だけど、怪しい情報が何も出てこないから、ただ気に食わないだけだと思うんだけどな……。
頼んだわよ、と言ったベルモットに送られたデータには顔写真と名前、あと直近の任務。組織に入った順に並んでいる。その1番上には……。
『……諸星大』
明美の彼氏。彼のことは自分でもいろいろ調べが、特に何も出なかった……これが偽装でなければいいんだけど。直近の任務には後始末と書かれている。まあ、誰もが通る道だ。
その他の人物は……
・安室透 情報収集
・緑川唯 情報収集
・水無怜奈 アナウンサー
……そういえば日売TVへ誰かを送りこんだって言ってたな。この女性がそうなのだろう。あとの2人は合同で情報収集。組織に入ったのもほぼ同じタイミングらしい。
正直全員疑わしい。組織に入って早々に重要な任務を与えられるのも、それに見合った力量があるのも……どちらにしたって確認しなければ。
いつもなら外に出る時には変装をするけど、この4人がNOCならばそちらの顔がバレる方がまずい。素の顔は割れているし、もしそうなら仲間も誘い出せるかもしれない。そうなれば御の字だ。服装も動きやすいものにする。
『……さて、誰からにしよう』