第94章 vs FBI
背を向けて逃げるなんて……そう思いながら後頭部に狙いを定めて引金を引く。鮮血が散って倒れ込んだ男の元に近づき息絶えているのを確認してから手を伸ばす。
『……よし』
昨日から始まったFBI狩り。これで3人目。服の内側を探りIDを抜き取る。血がついてしまっているから自分の服を汚さないように気をつけなければ。
「終わったか」
『うん』
抜き取ったIDをジンに渡すと、ジンは開かずに後ろにいたウォッカに投げ渡した。あと1人、この男と待ち合わせしているFBIの元へ向かう。
暗号を解読して辿り着いた先には、1人の外国人。その様子を遠目から確認する。
「悪いが、トニーはもうこられねぇってよ……」
ウォッカの声が聞こえたと同時にこちらへ向かって走ってくる足音。ジンがニヤリと笑って足を上げ、その男の顔面を蹴り飛ばした。そして倒れた男の口に拳銃を突っ込む。
「貴様らの隠れ家……喋る気はあるか?」
ジンが聞いてもFBIの男はもがくような音を漏らすだけだ。
「そうか、ねぇのか……だったら用はねぇな」
パシュッ……とサイレンサーによってかき消された銃声と共に鮮血が散った。先程と同じようにIDを抜き取る。これで4人目。時間的にこの辺りの人通りはそんなに多くないみたいだし、見つかるまでしばらくかかるだろう。
「ズラかるぞ」
そう言って歩き出したジンの後を追った。
身元不明の外国人の遺体。そんな内容のニュースを聞きながら起きたばかりの体を伸ばす。まだ全員は見つかっていないみたいだ。
『今日もヤツら待ち合わせてるの?』
「ああ……」
そう言って渡されたのは解読した暗号の内容。これの解読方法は説明されてやっとわかった。さすがに暗号文を見ただけではわからないけど。
『よっぽど自信あるんだろうね……』
私の呟きをジンが鼻で笑った。
今のところは4人。そしてこの後は、一昨日と昨日と同じならばまた2人。1人ずつ消していくのも悪くはないが、ヤツらの拠点を叩く方が楽だ。隠れ家を吐いてくれれば良いのだけど、ヤツらは仲間を売るほど落ちぶれてもいない。
気がかりなのは、赤井とコナン君の存在。暗号が筒抜けである事がわかれば、そこから先は高度な探り合いになる。それこそ、一手間違えたら即詰みの、レベルの高すぎる探り合いだ。