第93章 根拠のない確信
『……貴方にも連絡来てるのね』
「ええ。という事は貴女もですか」
工藤新一の情報を要求する、とラムから連絡が来て数日。SNSで飛び交う情報は集めているが、ラムはそれだけじゃ納得しないだろう。別の変装をしてポアロに通う事も考えたが、子供達や蘭ちゃん達に会ってしまったら決心が揺らいでしまう気がした。だからバーボンに話をして情報を集めてもらおうと思ったのだが、バーボンも既にラムからの指示を受けていた。
『貴方に頼んでいるなら私が出る必要ないじゃない』
「たしかにそうですけど、ラムの性格を考えたら一刻も早く情報を集めたいのでは?」
『……そうね』
ラムはせっかち。そんな事をジンが言っていた。キュラソーという腹心がいなくなった事で情報収集は以前より遅れているのだろうし、その情報の質も落ちているのかもしれない。
『で、何か策はあるの?』
「蘭さん達にもそれとなく探りは入れるつもりです。でも、1番は工藤邸に侵入できれば」
『侵入って……待って、あの家には沖矢昴って男が居候してるでしょ?』
「おや、彼の事知っていたんですね」
『まあ……いろいろあって。貴方も知り合いなの?』
「以前、波土のリハーサルの見学の時に会ったんです。彼もファンだったらしくて」
『へぇ……それだけ?』
「それだけ、とは?」
『なんとなく、他にも何かありそうだから』
ほんの少しだけ言葉にトゲがあった。バーボンともそれなりの付き合いになる。そうでなければ見落としてしまうほどのちいさな変化だった。
『まあ無理に聞かないけど。それよりどうやって入り込むつもり?居候の男もそうだし、そもそもあの家のセキュリティはそれなりだと思うし、ピッキングは難しいと思うわ』
世界で活躍するミステリー作家の工藤優作と日本の伝説的女優である工藤有希子。そして高校生探偵の工藤新一。そんな大物揃いの家のセキュリティが緩いわけがない。
「合鍵を入手できればいいんですけどね」
『合鍵……』
コナン君はもちろん持ってるだろうけどそれを盗むのは難しいだろうし。
『……蘭ちゃんが持ってたはずよ』
「え?」
『蘭ちゃんはあの家の合鍵を持ってるわ。たしか、財布に入れていた気がするけど』
「それ、話してよかったんですか?」
『何もしてないって思われるのも嫌だから。何かわかったら教えてよ』