第9章 すれ違い
ベルモットside―
「ジン、貴方どういうつもり?」
あの後マティーニをアジトに送り届け、再度ジンのいるホテルへ向かった。ウォッカに何度も来させる訳にはいかず、自分のバイクで。
―近づくなって言われちゃった
車の中で静かに涙を流したマティーニ。その姿に胸が苦しくなった。
「あの子を泣かせたら許さないって言わかなったかしら」
「……さあな」
ジンは何本目かわからないタバコに火をつけた。机の上には未開封のタバコの箱が山積みで。
「それなら、あの子を突き放した理由は?納得できるものなんでしょうね?」
「……」
「ちょっと聞いてるの?」
「……俺と一緒にいなければ、あいつが怪我することもねえだろ」
遠くを見つめたまま零された言葉。
「……まさか、貴方」
「あいつとはしばらく組まねえ……うまくやってくれ」
ジンはそう言って部屋を出ていった。
「本当に……揃いも揃って……」
どうしようもないくらい不器用。互いを思っているのに、それが交わることはきっとないのだろう。それぞれが本当の気持ちを相手に伝えることも……。
任務は被らない方がいいだろう。今回みたいなことが起これば、2人はまた自分を責める。
だから、2人は離れることを選んだ。それを拒む理由はない。
「……人が足りないかもね」
任務をわけるなら、消化できる数は増えるけど1つの任務に裂ける人数が減る。相手にもよるが、できるだけ2人以上で……それだと今のコードネームを持つメンバーだけでは人数不足か。しかし、そう簡単に名前を与えるわけにもいかない。
―あの人なんか嫌な感じするんだよね。
いつだったかマティーニがそう言った。その人物の素性を再度洗うと、CIAからのスパイだと判明し先日始末された。
今はその感覚に頼ってみるしか……。
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『え、じゃあ始末されたNOCってこの間の人なんだ』
「そうよ……知らなかったのね」
『まあ、死んじゃった人のこと気にしないし』
……マティーニの発言は時々ジンに似ている気がする。
「ちょっと会ってほしい人が何人かいるの。貴女の感覚に引っかかるかどうか……」
『いや、この間の人もそうだけど、なんとなく嫌な感じってだけだよ。荷が重いな……』
「なんとなくでいいから、ね?」
『ううっ……わかった』