第90章 過去との決別
取引現場に向かう車の中。この後の事を考えるとどうにも気分が上がらない。前に座るジンとウォッカが話しているけど、あまり頭に入ってこない。自分の愛銃を何度も撫でながら過去の事を思い出していた。
「おい」
車が止まってすぐ。ジンに声をかけられて車をおりた。そして、ジンとウォッカの後ろをついて行く。心臓の音がどんどんうるさくなっているのを感じた。
「……無理なら戻ってろ」
『……大丈夫。アレだけは私がやる』
ジンの言葉にゆっくり息を吐く。すぐに殺ればいいんだ。下手に時間をかける方がきっと辛い。ジンとウォッカが動き始めたら、すぐに。
「お待ちしておりました」
取引現場の倉庫。あの時のパーティの主催者の男と、その少し後ろに立っているロボット。視線を向けたのはほんの一瞬だったのに、そのロボットと目が合ってしまった。すると、それは花が開くような笑みを浮かべた。
悔しくて憎くてたまらない。本当によく似ている。
「それでは、本日の取引ですが……」
「必要ねえ」
「は?」
取引を始めようとした男をジンが鼻で笑った。それを見て男は間抜けな顔をする。
「それは一体どういう……」
「もうてめぇらとする取引は我々に何の利益もない。今までご苦労だったな」
「ふ、ふざけるなぁっ!」
男の声に護衛らしい男達が拳銃を構えた。
「わざわざ直接出向いて伝えてやったんだ。感謝して欲しいくらいだがな」
「この人数相手に勝てると思ってるんだなっ?!お前らやってしまえっ……?!」
護衛の1人の眉間に穴が空いた。
「チッ……早いぞ」
「ここまで焦らされてまだ待てって?!冗談じゃないよっ!」
通信機から聞こえてくるキャンティの声。そして、立て続けに撃ち込まれる弾丸。
「あの女は撃つなよ」
「ああ、わかってるさ。マティーニが殺るんだろ?」
横でされる会話に細く息を吐く。そして、ロボットを見据えた。
ジンとウォッカも拳銃を取り出して、周囲の男達を撃っている。中には逃げ出そうとするヤツもいるようだが、出口に向かえばキャンティがその頭を撃ち抜いていった。
「ああ、冥土の土産にもう1つおしえておいてやるが……てめぇらの本拠地にもこちらの手が回ってる」
「きっ、貴様らァっ!!」
「大人しく死んだ方が楽だと思うがな」
「くっ……セカンド、皆殺しにしてやれっ!!」