第89章 私の居場所
亜夜side―
―ずっとそこにいるの?
―こっち側につく気はない?
自室に戻ってぼーっと天井を眺めながら2人に言われた言葉を思い出す。
赤井の物を手放した事でいくらか気分は軽くなった気がしたが、それもすぐに沈んだ。本当の私を知らないからこその言葉なんだろうけど、それでも結構複雑だ。そんなにジンや他の幹部と違うだろうか。
チェーンに通した指輪をいじりながら考える。チェーンに通したこれを見た時、ジンが少し不機嫌になった。傷つけたくないと言えば納得したみたいだったけど。もし、ジンの指に同じものがあれば……とは考えたが、今のところその様子はない。
部屋のドアが開く音がして体を起こした。
『おかえり』
「……ああ」
『何かあった?』
「……面倒な取引の予定があってな」
前に比べて秘密にされる事が少しではあるが減った気がする。なんとも思わない様子でスマホの画面を見せてくるジンにはまだ慣れそうにない。
見せてくれたんだし……と思って覗き込んだ画面。そこに書かれていた取引相手とその内容を見て体の芯がスっと冷えた。
『……コイツらと取引するの?』
「表向きは取引だが、必要がなくなったから消す事になった」
『……それ、私も連れてって』
「駄目だ」
『っ……どうして』
「ヤツらの目的はお前だ」
『でも……』
「……納得できる理由があるんだろうな」
『うん……』
気は乗らないけど、ちゃんと話さなきゃ……そう思って、少しずつ話した。次第にジンの顔が険しくなっていく。
『大切だった人の死を冒涜されたようなものよ……だから、これは私が壊す』
「……」
『お願い、連れてって』
「……必要以上の事はするんじゃねえぞ」
『うん。ありがと』
正直、怖い。偽物だってわかっててもセカンドの顔をしたものを私の手で壊すのは。でも、そうしないと……またどこか知らないところで壊されたら、私が駄目になる気がするから。気持ちを作らないと……と思ったのに、気づけばベッドに押し倒されていた。
『ちょっと……』
「教えてやったろ」
『そうだけど……ねえ、触らないでよっ……』
「少しならいいだろ」
『そう言って少しで終わった事ないじゃないっ』
太ももを撫でるジンの手を掴むけど止まってくれる事はなく……案の定、意識が飛ぶまで抱かれた。