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【名探偵コナン】黒の天使

第88章 溺れるほどの愛を※


『ん……』

物音に目を覚ました。何度か瞬きをして視界を開く。

「起きたか」

既に身支度を整えたジンがこちらへ歩み寄ってきた。重だるい身体をどうにか起こすと、スっと顎を持ち上げられ触れるだけのキスが落とされる。フッと笑みをこぼしたジンに、昨日の事は全て現実なのだと改めて思った。

『……仕事?』

「ああ。お前は休んでろ」

『言われなくても……もう少し加減してくれればこうはならないんだけどね』

布団にくるまりながらジンを睨む。でも、それは全く効いていないようでまたキスされた。次第にそれは深くなっていき、私の左手にジンの右手が絡められる。

散々口内を好き勝手されてようやく唇が離される。そして踵を返し部屋を出ていった。

やっぱり夢なんじゃないかと思って頬をつねるが痛かった。私に向けられているとはわかっているが、甘すぎて胸焼けしそうだ。耐えられるだろうか。

……とりあえずシャワー浴びたい。最低限の処理はしてくれたようだがそれでも一度体を流したい。重すぎる体をどうにか支えながらバスルームへ向かう。鏡に映る私の体には案の定大量のキスマークがつけられていて、思わずため息をついた。

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ソファでぼーっとしているとジンが帰ってきた。

『おかえり』

「……ああ」

コートと帽子を脱いでさっさとバスルームに向かっていくジンをなんとなく目で追っていた。若干の眠気がやってきて目が閉じそうになる。

「おい」

『ん……わっ』

ジンの声に目を開くと、キラリと光る何かがこちらに向けて投げられた。慌てて両手を伸ばしそれを掴む。手を開いたそこにあったのは、シンプルなシルバーのリング。それを見て眠気が吹き飛んだ。

『これ……』

「持ってろ」

ジンはそのままバスルームに消えていった。

嬉しい気持ち以上にぐちゃぐちゃした感情が頭を埋めつくしていく。自惚れかもしれない。でも、昨日の今日でそう考えるなという方が無理な話だ。左手の薬指にそのリングを通そうとして……やめた。

『ははっ……』

乾いた笑いが漏れた。私にそんな事許されるわけがない。

リングはチェーンに通して首にかけておこう。私に許されるのはその程度までだ。傷がつくのが嫌だといえば……これもまた嘘になるのだろうか。

『ごめん……』

小さく呟いた声は、シャワーの音でかき消されていれば良いのだけど。
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