第88章 溺れるほどの愛を※
『っ?!な、にしてっ……!』
火をつけられた写真は灰皿の中であっという間に真っ黒な灰になった。
『なんで、大切だったんじゃ……』
「……もう俺にコイツはいらねえ」
『え……?』
ジンは立ち上がって私の前に来た。そして、そっと私の顎をすくい上げる。そしてそっと唇を重ねられた。重ねられただけの唇は小さく音を立てて離れていく。
「お前がいれば、それでいい」
『それって……』
「いや……お前がいねえと駄目だな」
そう言って笑うジンの目は今までに見た事がないような、トロリと甘くて溶けそうで。それが向けられている事だけで頭の奥が痺れてくるような、そんな感覚があった。
「……愛してやるよ、一生」
ジンは何かを吹っ切れたような、そんな様子だった。伝えられた言葉はずっと欲しかったもので、それでいて今の私には許されないものだった。
大きすぎる嬉しさと罪悪感。視界が涙で大きく揺れた。すぐにこぼれてきた涙は、ジンの指が何度も拭っていく。そして、また唇を重ねられた。何度も角度を変えて合わさって、舌が唇を割って入ってくる。荒々しさもあるけど、いつもと違う。
『っ、はぁ……』
唇が離れて、乱れた呼吸を整える。その間にジンに横抱きにされてベッドにおろされた。すぐに覆いかぶさってきたジンを言葉で制止する。
『あ、まって、シャワー……』
「必要ねえ」
『なくないよ、すぐ出てくるから』
「どうせまた入るじゃねえか」
『そうだけど……』
「最後に抱いたのいつだと思ってる?そろそろ我慢の限界だ」
夢なんじゃないかと思うくらい、ジンの言葉がストレートでどう反応していいのかわからない。ジンの手が体中を優しく撫でて、耳にはキスが落とされる。
流されてもいいだろうか。こんな私がジンを求めても、ジンに求められてもいいのだろうか。
「……どうした」
『なんか……いつもと違うからどうしていいか、わからない』
嘘ではないけど、1番の本心でもない言葉で誤魔化す。ジンは若干眉をひそめた。
「悪いか」
『違う、そうじゃなくて……なんというか、その……』
「素直に受け入れればいいだろ」
『……』
今日だけはいいだろうか。抱えている罪を、裏切りを忘れても。初めて向けられる明確な愛に溺れてもいいだろうか。
『……いいよ。たくさん、愛して?』
本当、私って最低だ。