第83章 憧れの人
杯戸中央病院へ行った日から数日後。バーボンから届いたメールには短い謝罪があった。やはり、赤井は死んでいたということだろう。バーボンがあれだけ証拠を集めていたのだからきっと間違いない……はず。
『はぁ……』
赤井が生きていたら言ってやりたい事があった。だから、少しばかり残念だ。
ぼーっとしていると、また新着のメールが入った。差出人はバーボンで。
《ポアロに来ませんか?巻き込んでしまったことをお詫びしたいので、よろしければ》
ポアロかぁ……もしかしたらコナン君がいるかもしれないと思うと足が止まる。行かなければいいのだろうけど、それでもポアロは好きだし……しばらく悩んで行くことにした。コナン君達がいるようなら引き返せばいい。
そう思っていたのだが、ポアロに行く途中で蘭ちゃん達に会ってしまいそのまま流れでポアロに行くことになってしまった。ドアを開けて、カウンターに座っていた小さな姿に頭を抑えたくなるのをどうにか堪える。
「いらっしゃいませ……ああ、来てくれたんですね」
『……こんにちは』
そう声を安室さんにかけるとコナン君の目が少しだけ細められた。
「蘭さん達と一緒だったんですね」
「たまたま途中で会ったんです。だから、一緒に行かないかって私達が声かけて……」
「そうですか。カウンターにしますか?」
「僕の隣おいでよ!」
コナン君はさっきの視線とはうって変わって、ニッコリと笑いながら自身の隣の席を指さした。
『うん。そうさせてもらうね』
そう言ってコナン君の隣に私、蘭ちゃん、園子ちゃんの順で並んで座る。ちらりとコナン君に視線を向けると、また先程と同じ目で見られていた。
『どうかした?』
「へっ?」
『ずっと見てくるから……何かついてる?』
「ああ、いや……なんでもないよ!」
『そう。ならいいんだけど』
コナン君から視線を外し、いつもと同じようにアイスコーヒーを注文した。少しして、目の前にアイスコーヒーとケーキが置かれた。
『私、アイスコーヒーしか……』
そう言いかけたのだが、バーボンは口元に指を当てて片目をパチッと閉じた。残りの言葉を飲み込んで肩をすくめた。
「そういえば、ずっと気になってたんですけど……蘭さんが空手を始めたきっかけってなんですか?」
世間話が一度切れたところでバーボンが蘭ちゃんに聞いた。