第81章 再調査
数日後。そろそろアジトへ戻ろうと準備をしていた。荷物をまとめ終えて、プライベート用の変装をする。
バーボンはあれから色々と情報を集めたらしく、それを聞くことになっている。この短期間でそれなりの情報を集めるとは……探り屋の呼び名もだてでは無い。
変装を終えるとほぼ同時に呼び鈴が鳴った。向こうにいるのがバーボンであることを確認してドアを開けた。
『……早かったのね』
「ええ。早く聞いて欲しかったものですから。その上で貴女の考えも教えてもらいたいんです」
そう言ってバーボンが話し始めたのは、とある神社でのこと。そこでFBIのジョディ・スターリングに盗聴器を仕掛けて得た情報だった。
「……どう思いますか?」
『悪いけど、私は貴方みたいに少ない情報から何かを導けるような人間じゃないの。それより、盗聴器はちゃんと回収したんでしょうね?』
「もちろん。にしても、あの少年は恐ろしい男だと思いませんか?」
『……それは同感ね』
あの少年をはかるバーボンと私のものさしの大きさは違うと思うが。きっとまだ、バーボンの中では頭のキレる少年という位置づけだろう。中身が高校生だとは思わないはずだ。
「……この後のご予定は?」
『帰るだけよ?』
「それなら、少し付き合ってもらえませんか?」
『……場所と理由しだいね』
「杯戸中央病院に行きたいんです。キールがFBIに匿われていた一件以降、その病院に潜伏していた楠田という男の行方がわからなくなっているはずです」
『……FBIに捕まったと考えるのが妥当じゃないの?』
「それも合わせて確かめに行きませんか?楠田という苗字はそう多くないはずですし、看護師の数人がその後の行方を知っている可能性もありますから」
『……わかったわよ』
確かに行方はわかっていない。それでも、コードネーム持ちではないし持つ情報だって大したものではない。だからこそ、ここまで何の指示もなかったんだと思うが。重要人物だったらどんな手を使っても見つけ出して、とっくに消されている。
「では、行きましょうか。チェックアウトの手続きもしないといけないようですし」
そう言って荷物を持ったバーボンの後をついて行った。
そして、今。杯戸中央病院にいる。
「僕は楠田の知り合いで、貸したお金を返してもらいたい……そういうことにしておいてください」
『ええ』