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【名探偵コナン】黒の天使

第74章 余裕なフリ※


『っ、は……ぁ……』

ナカにあった物がズルりと抜かれて大きく息を吐いた。

「……シャワーは」

『今日はむり……』

気だるげなジンの声にそう返す。まだ意識があるとはいえ、身体が重だるい。この状態でシャワーを浴びる気にはとてもじゃないがならない。

視界の端でジンが水を飲んでいるのが見えた。

『私も欲しい……』

上半身だけゆっくり起こしながらジンに手を伸ばす。が、その手は何も掴まされず、代わり唇がジンに塞がれる。そして、生あたたかい水が流し込まれた。

『……もっと』

強請るように言うとジンはまた口に水を含み、それを私の口に流し込んだ。

何度か繰り返せば口も喉もいくらか潤った。

『ありがと』

再度ベッドに身体を沈ませると、ジンは私の横に寝転がった。足りないわけじゃないけど、意識を飛ばすのが常だったから横に寝転ぶジンを見るのは変な感じ。

ぼーっとしていると、ジンの腕が肩に回ってきて強く引き寄せられる。激しい行為のせいか、しっとりと汗で濡れた肌に手を伸ばす。ジンの胸元に手を当てれば、鼓動が伝わってくる。

ジンは手持ち無沙汰なのか私の髪をすいてくる。それが心地いいし、身体の気だるさも相まって瞼が重くなってくる。

本当に好きだな……全部全部、好きで愛おしくてたまらない。

吐き出せない感情を押し込めるのは少し辛い。でも、私みたいな言えない秘密を抱えている人間がそんなことを言っていいはずがない。そばにいられるだけでいいと思わなければ。

「……なんだ」

『ん?』

「言いたいことがあるなら言え」

髪をすいていた手が離れていき、ジンの親指が今度は私の頬を摩る。

『……そばにいられるだけで、私は嬉しいから』

嘘ではない言葉で、1番伝えたい言葉を隠す。平気なフリだというのはたぶんバレてるけど、きっとそれを指摘されることはない。

だから、ジンの浮かべている表情にも何も言わないことにした。普段は絶対にしないような、少し不安げな顔。それだけじゃくて、色々な感情がごちゃ混ぜになっているような気もする。

私がそんな顔をさせているのか……変に期待をしてしまって、気持ちが僅かに浮ついた。

『おやすみ』

新たな気持ちを隠すようにそう呟いて目を閉じた。しばらくして、また髪をすかれる。再び訪れた心地良さに今度こそ意識は落ちていった。
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