第7章 まだ見ぬ者たち
亜夜side―
最近、写真を撮られていることに気づいた。それも、私が1人の時を狙って。
『ストーカー……ではなさそうなんだよね』
なら、何故私を?……前にいた組織のことだろうか。
あれだけ大規模な爆発事件だったのに、未だに証拠が出ない未解決事件。それでも、私を追うのはたまたま生き残った数人の証言があるからか。
あの件に関しては、私を捕まえたって話せることなんてほとんどない。思わずため息をつく。
もしくは、組織にスパイを送り込むための下調べ。裏社会にいれば必然的敵対する警察、CIA、FBI……MI6の線もあるか。この間も、CIAからのスパイを始末したって言ってたな。
その時感じた気配。
『……どこにいる』
周囲を見回すと人混みの中に、私に向けられたカメラ。癇に障って、あえて視線は逸らさなかった。
こちらが気づいたことに慌てた様子の男が去っていく。顔は覚えた。何かあれば始末できる。だから、追うことはせずにベルモットへ電話をかける。
『もしもし、私』
「あら、マティーニ。どうしたの?」
『最近、誰かに写真を撮られてる』
「……それって」
『ストーカーじゃないと思うの……毎回人が違うから』
「顔、変えた方がいいかしらね……」
『そうだね。ここまでくるとちょっと心配』
「……詳しいことは直接聞きたいわ。今日は帰ってくるの?」
『うん。そのつもり』
「わかったわ。待ってるわね」
------------------------
「……なるほど。スパイの可能性ね」
『この間も1人始末したし……だから、有り得るでしょ?』
「そうね……と、こんな感じでどう?」
鏡に映る私は別人。普段と真逆のふわふわした感じの女の子。
変装といってもマスクではなく、ウィッグを被ってメイクを施したもの。それでも、よっぽどの顔見知りでない限り気づかないだろう。
『ありがとう。これなら大丈夫そう』
「気に入ったならよかったわ……これから組織に入る人間には気をつけないと」
ボスには伝えておくわと言ってベルモットが部屋を出ていった。
これからしばらくは組織内がピリピリしそうだ。特にジン。殺気立ってそうで嫌だなあ……。
『面倒なことにならなきゃいいけど……』
少し胸騒ぎがするのは気のせいであって欲しい。