第7章 まだ見ぬ者たち
ある2人の男side―
「メシできたぞーって何見てんだ?……またその記事かよ」
数年前の爆発事故。表向きは製薬会社だったが、実際は密輸などを繰り返す犯罪組織だった。あれだけの規模で死者が多数出たのに、いまだに証拠が何も出ない未解決事件。
「いいじゃないですか。気になるんですよ」
「……お前喋り方気持ち悪いぞ、熱でもあるのか?」
「はあ……昨日言っただろ、潜入捜査なんだから普段とは違う自分で……」
「ああ、そんなこと言ってたな……」
「ヒロ、緊張感がなさすぎる!いつ命を落とすかわからないんだぞ!」
「んな怒るなよ、ゼロ……メシ冷めるぞ」
ゼロと呼ばれた男は、渋々スマホを置いて椅子に座った。
「で?なんであんな記事読んでたんだ?」
「もしかしたら、今回潜入する組織に関わりがあるんじゃないかと思ってな……」
「まさか……口調崩れてんぞ」
「あ……すみません。つい」
「やめた方がいいんじゃねえの?いつかボロ出るぞ」
「だから、今のうちから慣れておかないと……うん、美味しいですね」
「こっちが慣れねえわ……それで、その組織が爆発を起こしたってことか?」
「おそらく……それと僕が気になるのが……」
再びスマホの画面を開く。
「えっと……あ、これです」
ズームされた部分には……
「行方不明?」
「そうなんです……っていうか、そんな重大事件の記事読んだことないんですか」
「チラッとは見たさ……」
「ちなみに全員死因は焼死ではなく、射殺だそうです」
「そんなこと、どこに書いてあんだよ」
「マスコミには出ていない機密情報です」
「……有望なヤツは怖いな」
「それで……その行方不明の人物が……」
ピラッと出される写真。最近のものだろうか。そこに写る女性。
「そいつが被疑者ってことか……顔割れてるなら任意で引っ張るくらいできるだろ……」
「それが……現在、潜入する組織に所属しているらしいんです」
「は?!」
「拳銃密輸で捕まった者が見たらしく……どういう経緯かはわかりませんが……」
「でも、なんで……」
「それも確かめに行きましょう……ご馳走様でした」
皿を洗いながらゼロは言う。
「そういえば名前ですが、僕は"安室透"です。間違えないでくださいね」
「オレは……どうすっかな……」