第66章 赤と黒のクラッシュ
シボレーからおりてきた赤井の顔がジンの車に取り付けられたモニターに映し出された。ジンとウォッカの視線がそれに集中する。私も後部座席から乗り出してその様子を見ることにした。
キールと赤井の声が聞こえる。どうやら先回りしていろいろ探ったらしい。相変わらず警戒心の強いヤツ……まあ、あと数分の命だ。
ドンッ……
銃声の音……ゆっくりと赤井の目が見開かれ、その口の端に血が垂れていく。そして、赤井の顔が後ろを向いた。もしかしたら気づかれたかもしれないが……あの状態で逃げ切れるわけがない。
「はぁ……はぁ……」
徐々に荒くなっていく息。右胸に当てられた手は既に血塗れ。これで終わりか……なんて思ったのだけど。
「どうしたキール。早く止めを刺せ!」
「でも、肺を撃ち抜いたから放っておいてもあと30分程度で……」
「頭だ……頭に弾丸を撃ち込め。それでソイツの息の根は完全に停止する」
「……了解」
キールの拳銃が赤井の頭に向けて構えられる。
「フン……まさかここまでとはな……」
「私も驚いたわ……こんなにうまくいくなんて」
そんな会話の直後、二度目の銃声。赤井はそのままシートに倒れ込んだ。じわじわと血溜まりが広がっていく。
……ずいぶん呆気ないものだ。そんなことを思いながら後部座席に座り直した。
そんな会話の直後、二度目の銃声。赤井はそのままシートに倒れ込んだ。じわじわと血溜まりが広がっていく。
小さく息を吐いて後部座席に座り直した。遠くからパトカーのサイレンの音が聞こえる。
「近くで事故があったらしいですぜ」
「キール、後始末してズラかれ」
「了解」
キールがセットした爆弾によって、シボレーが炎に包まれた。もちろん、赤井の遺体と共に。
あれ、私……なんで平気なんだろう。
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アジトに戻ってすぐ自室に向かった。バスルームに入ってシャワーを頭から浴びる。
『どうして……』
涙が出てこない。自分でも不思議だ。スコッチの時はあんなに泣いたのに。
赤井が組織を去ってから時間が経ったからなのか、自分で意識している以上に憎んでいたのか。NOCであったヤツのために流す涙なんて馬鹿げているとは思うけど。
「……浮かねえ顔だな」
シャワーを終えてぼーっとしているとジンがそう言った。
『……そう?疲れてるのかも』
貼り付けた笑みでそう答えた。
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