第66章 赤と黒のクラッシュ
『……これで終わり?』
「ええ。ありがとうございます。助かりました」
『気にしなくていいよ……でも、あとは任せていい?』
「はい。お任せ下さい」
体をぐっと伸ばして研究室を出た。
研究室にあるプラッチック爆弾に発信器をしかけるように言われたのは2時間程前。
数は60個程度だったが出来上がっている物、しかもトラップがついている物に発信器を目立たないように仕掛けるにはかなり時間がかかった。
爆弾のタイマーは明日の午後5時。でも、この爆弾で誰かを始末するという目的はないらしい。信管を外せば爆発しないし、それにFBIが気づかないわけがない。もし、それに気づかないヤツがいて吹き飛んでくれたらラッキーだな。
爆弾はキールの居場所を炙り出すためのオマケだ。本命は発信器。出来上がった発信器付きの爆弾は、届け物に紛れさせてあの病院に送り付けることになっている。
大量の届け物だけでは病院側も不審に思うだろうが……そうならないための仕込みも他の人達がやってくれた。
『……死んだ、のかしら』
自室へ戻りながらぽつりと呟いた。
急ピッチで準備を進めたのは、杯戸中央病院に潜伏している楠田から定期連絡が来なかったから。正体がバレてFBIに捕らえられたのか、死んだのか……どちらにせよ、キールがその病院にいることは確定したわけだし、それならばこれ以上待つ必要もない。
それと、今回の件に乗じて赤井秀一を始末するようだ。あの方が銀の弾丸と恐れる男だ。早いうちに消しておいた方がいい。でも、あれほどの切れ者を本当に消せるか……上手くいくのに越したことはないが、上手く行き過ぎるのも不安かも。
自室のベッドの上でゴロゴロしていたら、ジンが帰ってきた。
『おかえり。順調?』
「ああ……問題はねえ」
『そう。よかった……それで、明日どう動くか教えてくれる?』
「……」
『まさかまた見張りか待機?』
「……ヤツらの動き次第だ。バイクで追うか、俺の車だな」
『ん。わかった』
それからだいたいの筋書きを聞いて、杯戸中央病院の周辺の地図を頭に叩き込んだ。
FBIとの全面戦争……と言っても過言ではない。ハイレベルな頭脳戦になりそうだ。明日は動けるコードネームのあるメンバーは全員動くようだし緊張するが、楽しみでもある。
「おい」
『ん?』
「喜べ、てめぇに仕事だ」
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