第65章 戒めの傷跡※
「……無視とはいい度胸だな」
そんな声が聞こえてジンの方を向いた。
『えっ、あれ、電話は?』
「とっくに終わった。何度も呼んでんだろ」
『ごめん、ちょっと考え事……何の話してたの?』
「その話は後だ」
ジンがふらりと立ち上がる。そして、ゆっくり私の方を向いて急に抱き上げられた。
『な、何を……』
「抱く」
『はぁ?さっきシたでしょ!』
「足りるわけねえだろ、馬鹿」
ベッドにおろされて逃げ出す間もなくジンの手が服を捲りあげた。
『ねえ!この後何かあるかもしれないでしょ!』
「……今日は何もねえよ。忙しくなるのは明日からだ」
『だからって抱く理由にならないでしょ!』
「次がいつになるかわからねえだろ」
『そ、そうかもしれないけど……』
ジンの胸に両手をつく。確かにしばらくできないと、次にする時確実に意識が飛ぶまで抱かれる。嫌なわけじゃないけど、身体が持たない。
『っ、あ……』
太ももの内側をジンの手が撫でた。
『ねえ待って……』
そう言ってもジンの手は動きを止めない。本当にこのままじゃ流されてしまう。
「……そんな格好でうろついて、我慢してやったこっちの身にもなれ」
『えっと……』
そう言われると何も言い返せない。でも、キャミソールとショートパンツ楽だし……。
「諦めろ。飛ばさねえ努力はしてやる」
『う……わかった……あ、待って、やっぱだめ!』
ジンが怪我人であることを思い出して慌てて止めようとしたけど……もう手遅れ。服をあっという間に脱がされて、与えられる快楽を受け入れるしかなかった。
……何度イったかわからない。鏡で見た自分の表情をまた見せていることが恥ずかしくて最初こそ隠していたけど、すぐに腕をベッドに押さえつけられてしまった。
限界を超えて身体は快楽を貪る。ジンの首に腕を回せば、汗でしっとりと濡れた肌がぴったりとくっついた。
『っ、ねえ、キスして……っ!』
好きと言いたくても、ベルモットに言われた裏切りという言葉が蘇る。たった一言言えないだけで、胸の奥が苦しい。だから、代わりに何度もキスをせがむ。
『う、あ……イ……っ!』
私の身体が跳ねると同時にゴム越しの熱を感じた。息も荒いうちにジンの顔に手を伸ばす。
『ジン……』
「……なんだ」
『……キスして』
ジンは何も言わずに唇を重ねてくれた。
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