第65章 戒めの傷跡※
『う、ん……』
ベッドから体を起こして上へぐっと伸びる。横を見れば、ジンはまだ目を閉じて寝息を立てていた。
キールの捜索は難航している。でも、ベルモットがどこからか得てきた情報からすると、もしかしたら事故を起こして入院しているかもしれない……真偽の程はわからないけど、情報があるなら何かあったらるはず。
キールが土門の車を追いかけていたことやその経路、他にも様々な情報から1番可能性のあるのは杯戸中央病院。もう既に組織の末端を潜り込ませる手筈になっている。
FBIがいるかもしれない病院にコードネームを持つ者が入るのはリスクが高すぎる。末端なら最悪始末されても問題ないし……確かそこに入り込むのは楠田って男だったはず。
ジンの顔にかかる髪を起こさないようにそっと避ける。左頬に残った傷を見て、胸の奥がきゅっ……と痛んだ。ジンの体にはいくつか傷があるけど、顔に傷がついたのを見るのは初めてな気がする。綺麗な顔なのに……結構深い傷みたいだし、ずっと残るんだろうな。
包帯は外して良くなったけど、まだ時々痛むらしく鎮痛剤は飲んでいる。薬は嫌うが湿布の方が嫌らしい。そのせいで眠りが深いのかも。
『はぁ……』
やばい、ムラムラする……するなというほうが無理な話、だと思う。
シャワーは普通に浴びるようになったけど、それでも背面や髪は洗いにくいらしいから、私が洗ってる。さすがに前面は自分でやってもらってる。
それでも、そんな気分にさせられる。目の前にある肌にもっと触りたいし、私だって触られたい。ジンを見て、抱かれている時のことを思い出して……そんなことがここの所ずっと。もちろん今だって。
ジンは怪我をしてるし、安静にしていないと……そう何度も自分に言い聞かせても。連日抱かれるのが普通だったんだから、私だけが悪いわけじゃない……うん、悪くない。
他の男に抱かれるなんて選択肢は最初からないし、自慰をするのもなんとなく気が引けてずっと我慢をしてきたけど……もう無理かもしれない。
ジンを起こさないように静かにベッドを出る。シャワーを浴びながらなら……音は誤魔化せるはずだし、1回すれば十分だ。すぐに終わらせられるはず。
『嘘……』
ただ抱かれている時のことを思い出していただけで濡らしているなんて。とんでもない身体にされてしまったものだ。
「おい」
『ん、えっ……?』