第62章 探りを入れる
ベルモットに会ってから数日。ジンはいつにも増して機嫌が悪い。タバコの煙と突き刺さりそうな雰囲気に包まれながら、口を開いた。
『何かあったの?』
「ベルモットが何を企んでるか知ってるか」
『……さあ。この間聞いたけど、はぐらかされちゃったし』
「チッ……」
『でもなんで?』
ジンは灰皿にタバコを押し付けた。
「……次の満月の日に開かれるハロウィンパーティー。それにあの女が1枚噛んでいる。その内情を探れとの命令だ」
『ハロウィンパーティーって……』
季節外れもいいところだ。何かしら理由はあるんだろうけど……もしかして、その日に何か行動を起こすつもりだろうか。
「てめぇが潜れ」
『あ……ごめん、その日は無理』
「あ?」
『ごめんってば。満月の日でしょ?外せない用があって……』
そんな予定ないんだけど、パーティーに潜り込むよりベルモットの動向を追いたい。
『ウォッカは?ウォッカなら変装……いや、ハロウィンなら仮装か。それもできるだろうし……』
「……」
その反応はOKってことかな……ジンはまた新しいタバコに火をつけた。
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あっという間に満月の日。ジンはウォッカを連れて出ている。ウォッカの仮装はなかなか上手くできていたし、問題はないだろう。
扉が開いた音がして顔をあげる。そこにはライフルのケースより一回り大きいバッグを背負ったカルバドスが。
『あら、カルバドス。どこ行くの?』
「……ベルモットに呼ばれた」
予想通りの答えだ。ベルモットが協力を仰ぐとしたら、消去法でカルバドスしかいないから。でも、表情を変えずにそのまま会話を続ける。
『へえ……送ろうか?』
「いや、いい」
『そっか。気をつけてね』
すれ違いざまに彼の服の裾に発信器付きの盗聴器を仕掛けた。たぶん、カルバドスはそれに気づかないだろう。申し訳ないけど利用させてもらう。
アジトを出て、私は仕掛けた発信器の電波がギリギリ届く場所に車を止めた。積み込んである機械が狂いなく動いているのを確認し、スマホの電源を切る。タバコに火をつけイヤホンを耳に入れた。
しばらくして、イヤホンから2台の車が止まった音がした。その後、流れ込んでくる声を聞き漏らさないように、真っ白なノートに聞き得た情報を殴り書いていく。
予想以上の情報に口角が上がるのを抑えることはできなかった。
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