第59章 XXX ※
「っ……おい、ちゃんと立て」
『っ、や、むりぃっ……!』
立てって言うなら抽挿を止めてくれればいいのに、止まるどころか激しさを増すばかり。それでもどうにか倒れないように、快感に溺れながらジンにしがみつく。
シャワー、流しっぱなしにしておいてよかった。そうでなければ、肌の当たる音や喘ぐ声がよく響いていただろう。
『あ、まって……イく、から……っ』
再び迫る絶頂をどうにか訴える。ジンが大きく息を吐くと、その眉間に若干力が入った。
『んぁ……あああっ!』
「っ……」
私が達すると、ほんの少し遅れてジンのモノが抜かれる。そして、放たれた白濁は私の腹部に飛び散って、すぐにシャワーのお湯がそれを流していった。
抱えられていた脚がおろされる。でも、ふらついてまともに立てないからジンに腕を回したまま。
『ね、キス……』
ジンの顔を覗き込みながら言うと、荒々しく唇が重ねられる。イった余韻が残る身体は、ジンの舌が口内を掠めるたびに小さく震えた。
唇が離れていくと、視界の隅でジンの手が蛇口を捻り流れ続けていたお湯がぱたりと止まる。
「まだイけるよな」
『ん……えっ、むり……』
ぼーっとした頭で適当に返事を返した後で、その言葉の意味を理解して慌てて否定したがもう手遅れ。身体もろくに拭かないままベッドに連れていかれ、今度は意識が飛ぶまで抱かれた。
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『……あの男捕まったんだ』
「あの男?」
『ジンは覚えてないかもね……ほら、沼淵って男』
「ああ、あの使えねえモルモットか」
重だるい腰をさすりながら見ていたネットニュース。割と上の方にあったニュースだけど、捕まったのは数日前らしい。
ジンはタバコに火をつけた。
「それより、例のソフトの件はどうなってる」
『もう日時を知らせるってメールは送ったはずだけど』
取引は明後日の午前0時。それを板倉に知らせるのは前日の午前0時。
当日私は見張り。しかも、天気予報は雪。
『……』
「どうかしたか」
『ううん、なんでもない』
そうは答えたけど……何か起きそうな感じ。それがいい事なのかよくない事なのかはまだわからないけど、だいたいこういう時はよくない事であることが多い。勘でしかないけど、この手のことはよく当たる。
どうにも……あのメガネの少年の姿がチラつくのだ。