第5章 それぞれの思い※
キスをしながら、呼吸のリズムをつくる。そうすると次第に力が抜けていく。ある程度力が抜けたところで一気に奥へ入れる。
突然で驚いたのと、痛みのせいかキスしていた唇を噛まれる。じわっと血が滲んた。
「チッ……いってえな」
『ごめんっ……でも、急に……』
「ああ、悪い……やっと全部入ったがな」
しばらく馴染むまでそっとしておこうと思うと、亜夜が微笑んだ。
「何笑ってる」
『怖かったけど、なんか、今嬉しくて』
その言葉にどうにか繋いでいた理性がプチンと切れた。
自身を引き抜き思いっきり奥を突く。
「てめぇ、どうなっても知らねえからなっ……」
奥を突く度に締め付けが強くなっていく。目をぎゅっと瞑り、シーツを握って快感に耐えようとする亜夜の姿。
……全てが堪らなく愛おしい。
「亜夜……」
名前を呼ぶと驚いたように目を開く。最近、コードネームでしか呼んでなかった……そんな気がする。
『……ジンっ』
快感に溺れながらも呼ばれる名前。もう止まれるわけがなかった。
「本当に……てめぇはっ……!」
そのまま絶対を迎える亜夜。顔に伸ばされた手を掴み、再度奥を突く。
「……俺が満足するまで付き合え」
そのまま何度達したか。亜夜はもう体力も限界のようで、瞼が落ちそうだ。
「……愛してる」
どうか、この言葉は亜夜に届いていないことを祈る。それを許される世界ではないのだから。だけど、今だけ……。
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翌朝。亜夜にシーツを掛け、自分はシャワーを浴びる。そして、ベルモットへ電話をかけた。
「Hi、こんな時間に何かしら」
「……マティーニの着替え持ってこい」
「あら、うまくいったのね」
「黙ってろ」
「酷いわ、こうでもしなきゃ何もしなかったくせに」
「チッ……ウォッカがいるなら送ってもらえ。俺も用がある」
「はあ……わかったわ。まさかとは思うけど、抱き潰したりしてないでしょうね?」
「……」
「呆れた」
「うるせえ。さっさと来い」
そう言って電話を切る。
しばらくして、ベルモットが来た。寝ている亜夜を見て、ため息を零す。
「はあ……貴方って本当……」
「……しばらく空ける」
そう言って部屋を出た。