第58章 少年探偵団と先生と
「……また出かけるのか」
『いいでしょ別に。今日は任務ないんだから』
連夜の取引は何事もなく無事に終わった。そして、今日はバーボンと出かける日。
例のごとく変装メイクをしていると、ジンの不機嫌な声がかかる。
『そろそろ教えてくれない?この顔を嫌がる理由』
「……何もねえよ」
『……そう』
絶対何かあるのに……まあ、いくら問いただしたところで本当の答えは得られないし。ウォッカに聞いてもたぶん無理だし。
『……じゃあ行くね。そんなに遅くならないと思うから』
メイク道具を片付けてジンに声をかける。返事はないけど、それもいつものこと。でも、今日はなんかうまく受け流せなくてジンに近づく。
短くなったタバコを灰皿に押し付けながら、ふっ……と顔を上げたジンに自分の顔を寄せる。唇が触れる寸前でジンの手が間に割って入った。
『……つれないわね』
「言ってろ」
ジンはまた新しいタバコに火をつけた。
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『最近行ってないな……』
ポアロの近くの道を歩きながらぽつりと呟いた。また頃合いを見て行こう……なんて思いながら店の前を通り過ぎようとした時。
「あれ?亜夜さん?」
呼びかける声と階段を降りてきた姿に足を止めた。
『あら、コナン君。こんにちは』
「こんにちは〜、どこか行くの?」
『ええ。用があって米花百貨店まで』
「そうなの?僕もなんだ」
『あら、じゃあ一緒に行く?』
「うん!」
なんて、会話の流れで言ってしまったものの……小学生って何を話題にすればいいんだろう……。
「亜夜さんって、何のお仕事してるの?」
『えっと……』
最初からなんて答えにくい質問を……正直に答えることもできないし。
『まだナイショ。コナン君はなりたいものってあるの?』
「僕は……探偵になりたいんだ。シャーロック・ホームズみたいな探偵に」
『へえ……すごい。じゃあ新一君や毛利探偵が近くにいるから、たくさん勉強できるわね』
「う、うん。えへへ……」
照れたように笑うコナン君。気づけばもうすぐそこに目的地が迫っていた。
「あ!コナン君!」
「遅せぇぞコナン!」
「わりぃ……ってまだ時間より前だぞ」
駆け寄ってきた子供たちは、よく覚えのある顔だった。きょとんとした視線が一気に向けられる。
「お姉さん、だあれ?」