第54章 全部私が※
翌日。起きたのはお昼を少し過ぎた時間。アラームかけなかったな……何の用事もなくてよかった。
私の体調は万全とは言えないけど、生活をするのに支障のないくらいまで回復した。
昨日ウォッカが買ってきてくれた菓子パンを食べ、完治したわけじゃないので薬も飲む。
ジンは朝早くから出かけたようで、私が起きた時にはもう姿がなかった。風邪移ってないといいけど。
『シャワー……浴びてもいいよね』
汗もかいてるだろうし一刻も早く体を洗い流したい。部屋の暖房をつけてバスルームへ向かった。
頭からシャワーを浴びる。できることならお湯を張りたかったけど、その間我慢する方が嫌だった。夜はちゃんと湯船に浸かろう。
鏡に映る自分の顔も問題なさそうだ。と、目を逸らそうとした時、鏡の一点に視線が奪われた。
『……血?』
本当に小さな赤い点。指で擦ったら消えてしまった。てことは割と最近のもの……?私そんなに血が飛び散るような大きな怪我したっけ?血だとも限らないけど……。
首を傾げながらシャワーを浴び終えて体を拭く。服を着ようとしたところで気づいた。
『うわ、パンツ忘れた……』
用意しておいた服じゃお尻まで隠れないし……どうしようもないのでタオルを体に巻いてバスルームを出た。しかし、こういう時に限って用意しておいたブラとセットのパンツがなかなか見つからない。
仕方ない、別のものにしよう。そう思って別のセットを出した時、ノックの音が響いた。なんてタイミング……。
『誰?』
「俺です」
『ごめん、ちょっと待って、着替え中』
ウォッカの声が聞こえて慌てて止める。それなのにドアが開いた。
『ねえ!待ってって……』
ブラのホックをかけながら顔だけそちらへ向けると、入ってきたのはジンだけ。ウォッカの姿はない。
『あ、えっと……』
「体調は」
『特に問題ない……』
そう言うとジンの左手が服を取ろうとした私の腕を掴む。そして下着しか身につけていない私をベッドまで引っ張り、そのまま倒される。
『ちょっと……!』
拒もうとして伸ばした手がジンの右腕に当たった。
「っ……」
ジンの顔が少しだけ歪む。そんなに強く当たったかな……。
『ご、ごめん、でも……』
「……昨日は我慢してやったろ」
『そうだけどまだこんな時間……!』
「何か用事でもあんのか」
『……ない』