第5章 それぞれの思い※
『私。入るよ』
声がかけられ、ドアが開けられた。亜夜の滅多に見ることのない私服姿。スラリと伸びる四肢に喉が鳴る。
呼び出した本題に入ると、いかにも不安そうな顔を浮かべる。そして、明らかに的外れな発言。普段とは違う、冷静さを失った様子にさえ欲が湧き上がりつつある。
壁際へ追い詰め顔の横に手を突く。
『あ、えっと……怒ってる?』
「あたりめえだろ」
こんな策を考えるベルモットと……それに敢えて乗った自分に。
『そういうこと!したことないの!』
しばらくの攻防の後、観念したように言う亜夜の顔は真っ赤。初心過ぎる反応と、それに熱を持ち始めた自身に向けて言う。
「……やっぱりまだまだガキだな」
『そんなこと言ったってしょうがないでしょ!』
ムキになって反抗してくる亜夜の顎に指を添え、口を塞いだ。
驚いたのか、何も反応がない。そっと唇を離すとポカンとした顔。
「……なんだその間抜けな顔は」
それすらも欲を掻き立てる。
『もうやだ……帰る』
やっと抵抗を始める亜夜。でも、その手に力は入っていない。
「……帰すわけねえだろ」
再び唇を重ねた。
息の仕方もわからないのだろう。胸を叩く亜夜。鼻で息しろ……そう言ってまた……。
……もう抑えがきかない。
ぎゅっと結ばれた亜夜の唇を舌で舐める。
「おい……口開け」
うっすらと開かれる隙間に舌をねじ込んた。慌てたように口を閉じようとするが今更遅い。
亜夜の腰に腕を回し引き寄せた。舌を絡め、歯列をなぞる。身体がビクビクと反応しているのが伝わる。
その時、亜夜の目が開かれた。視線がぶつかる。
ドクン
身体の奥で熱が湧く。それと同時に亜夜の腰が抜けた。
息を整えながら俺を睨む亜夜。
「こんなので腰抜けてたら、この先持たねえなあ……」
そう言って亜夜を抱き上げた。
「ちょっ、おろしてっ!」
そのままベッドにおろす。慌てて逃げようとする亜夜。それを阻止するため覆いかぶさり腕を押さえつける。
『わ、悪い冗談ならやめてくれる……?』
……冗談なわけあるか。そう思って何度目かのキスをする。
口を離すと間を繋ぐ銀の糸。
「……嫌なら本気で抵抗しろ」