第51章 ひとつの可能性
もう一度謝ってお会計を済ませる。それからコナン君の方を向き直った。するとコナン君はハッとしたようにスマホを取り出す。
「そうだ、亜夜さん、連絡先聞いてもいい?」
『ええ。ちょっと待ってね……』
先日新しく買ったスマホを取り出して電源を付ける。そしてパスワードを入力。まさか、1番最初に登録するのがこの子のものだとは思わなかった。
『仕事ですぐに出られないこと多いと思うから……電話に出なかった時はメール入れてくれると助かる』
「うん。わかった。蘭姉ちゃん達にも教えていい?」
『もちろん』
万が一の時はこのスマホ完全に壊さないと。ド真ん中を撃ち抜けばデータも復元できなくなるだろう……あの時のように。
コナン君はここで博士のことを待つようで、椅子に座ったままスマホをいじっている。
『……また来ます。コナン君もまたね』
「はーい、お待ちしてますねー」
「うん。じゃあね」
ヒラヒラと手を振る2人に微笑み返して店を出た。買うものなんて何もないけど、頭の中を整理したくて帰り道とは違う方向へ足を向けた。
『ちゃんと見えてると思うんだけどな……』
メガネを拾って差し出す時、目が合ったし視点もブレていなかったように思う。視力が悪いと距離感を掴むのも難しいから……でも、あの手は狂いなくメガネを掴んだ。
そもそも、あのメガネに度は入っていなかった。レンズ越しの景色は歪んでいなかった。小学生が伊達メガネなんてかける理由を思いつかないし、もっと別の何かがあるはず。
顔を隠したいから、とか。私だって変装道具としてメガネを使う。それだけだって印象はだいぶ変わるものだ。
メガネをかけていないコナン君の顔を見るのはもちろん初めて。にしてもよく似ていたな……あのパーティで会った工藤新一に。
親戚と言っていたが、かなり血縁が近いのだろうか……それとも本人?あのマウスと同じように、幼児化した工藤新一本人の可能性もある。
もし、江戸川コナン=工藤新一ならば、シェリーだって同じように……何にしてももっと調べないと。まだあくまで可能性でしかない。欠けているピースが多すぎる。
フラフラと知らない道を通り抜けていると、いつの間にか見知った道に。お腹もいっぱいだし頭を使いすぎて疲れた。さっさとシャワー浴びて寝よう。
……そういえば明日だっけ、空けておくように言われたの。
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