第43章 純粋な優しさ
いつもの待ち合わせ場所についた。その途端、雨足が弱くなる。今日はとことんついていない日らしい。
細くため息をついて壁にもたれかかる。そして電話をかけた。相手はすぐに出てくれる。
「もしもし」
『……バーボン?今どこ?』
「本業の方で……何かありましたか?」
『……いつものところで待ってる。何時になってもいいから迎えに来て』
「は……?じゃあ、どこか店に入っててください。しばらくかかるので……」
『この格好じゃ目立つからここで待ってる。どうしても無理ならいい』
「いや行きますよ……行きますけど……」
『この前ほど酷い雨じゃないから大丈夫。急がなくていいから』
それだけ言って電話を切った。ついでにメールボックスを開いたけど、ジンやウォッカからの連絡は入ってない。
またため息をついて、ズルズルとその場に座り込んだ。そして、膝を抱えてそこに顔を埋める。あんなに泣いたのにまた泣きそう……。
『……寒い』
季節は暖かくなってきたものの、そう気温は高くない。ましてや雨が降っていれば尚更。体をぎゅっと小さくしても少しずつ体温は逃げていく。近くに自販機あったかな……コーヒーか何か買おうかな……。
「お姉さん、何してるの?」
顔を上げるとそこにいたのは小学生くらいの子供たち。状況が理解しきれなくて言葉が出てこない。
「お姉さん1人?雨だから風邪ひいちゃうよ?」
『あ……えっと……』
「何か悲しいことでもあったんですか?目の周り赤くなってますよ」
「ホントだ!泣いてたのか?」
矢継ぎ早に質問されるけど、どれにも答えられない。きっと悪気なんてないんだろうけど、もう少しオブラートに包んでくれないかな……。
『少し泣いたけどもう大丈夫よ。人を待ってるの』
「そうなのか?」
「それならここにいるしかないですね……」
「うーん、じゃあ歩美のハンカチ貸してあげる!」
『え……でも……』
「お姉さん少し濡れちゃってるし、それがあれば泣いても大丈夫でしょ?歩美のお気に入りなんだけど、それ持ってると嬉しい気持ちになるから!」
「それじゃ俺はこの飴やるぜ!ミントたからスースーして俺は苦手なんだけどよ」
「僕は……」
「なんだよ光彦、何も持ってねえのか?」
「それじゃ、この傘……」
『それは駄目よ、貴方が濡れちゃうわ』