第42章 遅すぎた知らせ
トロピカルランドの事件から1ヶ月以上が過ぎた。
その間、ニュースや新聞には工藤新一死亡の文字が出ることがなく、先日彼の家へ派遣した人達によってやっと確認が取れたと報告が上がった。いや、報告が上がったと言うより……あの薬の使用者リストの工藤新一の欄が、不明から死亡に変わったのを見ただけだ。
例の10億円強奪の件も上手くいったようで、ジンとウォッカが昨日の夜、その金を受け取りに行った。犯人がまだ見つからない、とニュースでは連日報道されている。
身だしなみを整えてテレビをつけた。グラスに水を入れて1口飲む。
『……スマホ取りに行かなきゃ』
1度直してもらって使えるようになったんだけど、また1週間前におかしくなった。だから、また預けてある。変えなきゃ駄目かなぁ……。
〈次のニュースです。先日の10億円強奪事件の犯人が遺体で発見されました……〉
『え……?』
テーブルにグラスを置く音が大きめに響いた。でも、珍しいことじゃない。口封じのためだ。それなら昨日2人が会いに行った相手も……。
〈警察は仲間割れが原因と見て調べを進めています。主犯と思われる広田雅美さんは……〉
そう言って写し出された写真。それを見て、またグラスを取ろうとした指先が固まり、そのままグラスを押し倒した。そのまま床に転がり落ちて破片と水が飛び散る。でも、そんなことを気にすることはなかった。
『明美……?』
名前は違う。でも、その顔を私が見間違えるわけがない。
体中から熱が消えていく。ニュースの声は右から左に抜けて、内容が全く入ってこない。
『嘘……嘘よね……』
部屋を飛び出してラボに走った。
『スマホ返して!!』
「えっ……ああ、どうぞ」
若干押され気味の相手からスマホを奪い取る。ラボを出ながら明美に電話をかける。
〈おかけになった電話番号は現在使われておりません〉
『明美……』
藁にもすがる思いでメールボックスを開くとそこには明美の名前が2件。
《亜夜、ちゃんと会たかったけど……こんな形で別れを伝えることを許してください。
大きな任務を与えられて、それが成功したら志保と私は組織から抜けさせてもらえるんだって。本当は亜夜に相談しようとも思ったけど……本当にごめん。
言いたいことがたくさんあるけど、その中でも絶対伝えたいことだけ……》