第41章 嫌な匂い
トロピカルランドから出て、行くところがあると言ってジン達と別れた。そもそも車を止めてる場所が違うし……あんなに堂々と最前列にあの車を止めるなんて私にはできない。
自分の車に乗り込んで電話をかける。相手は数コールの後出てくれた。
「もしもし」
『志保?私』
「亜夜姉?どうしたの?」
『今から会えないかなって思ったんだけど……』
「……大丈夫よ。でも今、お姉ちゃんと外に出てるの」
『そうなの?じゃあ迎えに行くよ。明美にも会いたいし』
「わかった。住所送るから」
『うん、また後でね』
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「ごめん亜夜姉、待たせたよね」
『気にしないで。そもそも急に連絡したの私なんだから。明美、久しぶりだね』
「そうだね。亜夜も元気そうでよかった」
2人を後部座席に乗せてエンジンをかけた。
『明美はどこに送ればいい?』
「えっと……○○ホテルで」
『……わかった。あ、そこにある袋1つずつ持ってってね』
「トロピカルランド……って、何かあったの?」
『まあ、ちょっとね』
指定されたホテルまでは15分ほど。いつもだったら話しすぎて時間が足りないくらいなのに、今日は会話が全然続かない。
明美はなんか疲れてるようにみえるし、志保はものすごく考え込んでいる顔。
『2人とも大丈夫?元気ない?』
「え、そう?……もしかしたら寝不足かも」
明美はそう答えたけど、志保は無言のまま。
『あんまり無理しちゃ駄目だよ。志保も寝不足?』
「っ……ごめん、何?」
『寝不足なのかなって思ったんだけど……悩み事?』
「……そんな感じ、かも」
『1人で抱え込みすぎないようにね。必要なら相談も乗るから』
「うん、ありがと」
そして○○ホテルに到着。明美が降りたから窓を開けた。
「送ってくれてありがとう」
『ううん、気にしないで。今度は新居にお邪魔したいかも』
「……うん。都合つけるようにするね」
その言い方に妙な違和感を覚えた。
「またね、お姉ちゃん」
『それじゃ、また。何かあったら連絡してよ』
「またね、志保。亜夜も元気でね」
更に違和感が大きくなったけど、それが何故なのか理由がわからない。走り出した車のバックミラーには、こちらに向けて手を振る明美の姿があった。