第37章 面白いもの
『もう……』
きっと何も言わないんだろうなぁ……なんて呆れつつジンの側へ歩み寄る。ジンが眺めるスマホに映った男の顔。
『それ誰?』
「組織のことを嗅ぎ回ってるネズミだ」
『へぇ……どうするの?』
「3日後、米花港近くのバーで取引。その時に始末する」
『あのバーね。どうやって始末するの?』
「それは任せる」
『……私にやれって?』
「最近退屈そうにしてるじゃねえか」
『否定はできないんだけど……証拠も身元もわからないようにしないといけないでしょ……うーん、爆弾?』
そうなると1番手っ取り早い方法は爆弾かな。仕掛けられる場所……車で来ることを期待するしかないか。それが無理なら、持ち物全部奪って海に……。
自分のスマホで3日後の天気を確認。夜まで晴れの予定だ。さすがに雨の中でやるのは勘弁して欲しい。
「おい、どこに行く」
『爆弾もらってくる』
「今じゃなくていいだろ」
『大きさによって仕掛け方とか場所とか変わるでしょ。時間もそんなにないだろうし、段取りは決めておきたいの。まあ、車で来てくれないと意味ないけど』
「……明日にしろ」
腰をグッと引き寄せられる。よろけそうになって、ジンの肩に手を置いた。そして一気に顔が近くなる。キスされる、そう思って少し身を引いた。すると、ジンに無言で睨みつけられる。
『……シェリーの体、忘れたらしていいよ』
「……覚えてねえ」
『何、その微妙な間。絶対覚えてるでしょ』
「妬いてんのか?」
『悪い?そりゃ、こんな傷だらけの体より、華奢で綺麗な体の方がいいと思うけどさ……』
「馬鹿なこと言ってんじゃねえよ」
頭を引き寄せられて、そのまま唇が重なった。触れるだけのキスはすぐに離される。
『……まだ忘れてないんでしょ』
「だったらお前の体で上書きすればいい」
『本当……そういうとこムカつく』
「あ?」
『その気にさせるのが上手って褒めてるの』
「なら問題ねえよな?」
『……好きにすれば』
そう言っても、ジンの手は体のラインをなぞるだけ。焦らすようなその手に自分の手で触れる。
『何がしたいの』
「……お前が強請るまで待とうかと思ってな」
『はあ……』
誘ったのはジンのくせに……でも、私もその気になってる。
『……抱いて』
その言葉にジンはニヤッと笑い、また唇を塞がれた。