第36章 諦めませんから
『ねえ、いつまで不機嫌でいるつもり?』
「……んなことねえ」
『どっからどう見ても不機嫌よ。しょうがないでしょ、任務なんだから』
ジンは何本目かわからないタバコに火をつけた。おかげで部屋の中は煙たくて仕方ない。
ジンの機嫌が悪くなったのは今朝、私の任務の連絡が来てから。今回は遠方にいる組織との取引。明日と明後日の2日間。スムーズに行けば1日で終わるんだけど……万が一のことも考えて2日間らしい。でも、ジンの機嫌が悪い原因は任務自体ではなく組む相手。
『あれからバーボンとは何もないってば』
「……どうだかな」
『あのねえ……』
思わずため息をついた。あの日からしばらく経ったけどバーボンには会ってない。謝罪のメールは送ったけど、本当にそれだけ。その件に関しては返信も来てないし。
『ていうか、なんで私達が出向くのよ。あっちが来ればいいでしょ』
「……あの方の指示だ」
『……』
ジンの忠誠心ってすごいよなっていつも思う。ジンがこの組織に入るに至った経緯は知らないけど、それなりの理由があるんだろう。
『明日のこと、バーボンに連絡してくる』
「勝手にしろ」
『本当に機嫌なおしてよ……今日は好きにしていいから、ね?』
「言われなくてもそのつもりだ」
『じゃあ、ちょっと待ってて』
電話をすれば数コールの後繋がった。
「はい」
『バーボン、久しぶり。明日のことなんだけど……』
「アジトまで迎えに行きますよ。時間はまたメールしてください」
『……わかった。よろしくね』
「会えるのを楽しみにしてます。それでは」
それだけ言って一方的に電話が切られた。時間は……取引相手の所までどのくらいかかるんだろ。取引自体は夕方からだし、そんなに急がなくてもいいか……。
「まだか」
『もうちょっと……』
時間を決めてメールを送れば、了解、と返事が。
持っていく物の準備をしたいけど……待たせた分だけ激しさが増す気がする。
『……少しは加減してよ』
「少し、な」
……まあ、加減なんてろくにしてもらえず。何度イッたかわからないし、消えかけた歯型の上には新しい跡がつけられる。意識を飛ばさなかっただけよかったかな。
「お前は誰の物か……忘れるなよ亜夜」
『ふふっ……わかってるよ』
見つめあって、キスをして、眠りについて……そして翌日。