第4章 下手くそ……※
『んんっ!……ふっ、あっ』
思わず口を閉じようとしたけど、ジンの舌がそれを許さない。
壁に突かれていたジンの腕が腰にまわされる。更に距離が縮まる。舌を絡められ、歯列をなぞられ、知らない感覚に身体が反応する。それから逃げたくて顔を背けようとするけど……。抵抗のしようがない。鼻での呼吸も浅くなって、頭がぼーっとしてくる。
何、これ……気持ちいい。
口の端から涎がつたった。うっすら目を開くと、視線がぶつかる。
ドクン
身体の中で何かが波打った。
同時に腰が抜ける。ジンが支えてなかったら、倒れていた。
『はあ……はあ……』
やっと唇が離れた。だけど、息……上手くできない。
そんな私を見下ろすジンを軽く睨む。
あれだけのキスをしたのに、顔色ひとつ変わってない。
「こんなので腰抜けてたら、この先持たねえなあ……」
そう言うと、背中と膝の裏に腕を……あっという間に横抱きにされる。
『ちょっ、おろしてっ!』
「うるせえ、黙ってろ……落とすぞ」
……落とされるのは嫌だ。不本意だが、大人しくしよう……。
「ほらよ」
そう言っておろされたベッドの上。
まずいっ……
慌てて逃げようとするけど、すぐにジンが覆いかぶさってきて、腕を押さえつけられる。これじゃ……逃げられない。
『わ、悪い冗談ならやめてくれる……?』
「……」
ギロッと睨まれる。今はそれに怯んでられるかっ。
『ね?だって、こういうことはさ……』
言い切る前にジンの顔が近づいてきて、キスされる。さっきのと同じ……深いやつ。
……やっぱり、気持ちいい。
この先に興味がない訳じゃない。セックスは気持ちいいって聞いたことがあるし、キスだけでこんなに気持ちいいなら、この先に待つ快楽はどれだけのものなんだろう……。
思考が溺れかけるところで、唇が離れる。つうっと2人の間を銀の糸が繋ぐ。
「……嫌なら本気で抵抗しろ」
そう言ってジンは服に手をかける。
『まっ、待って!』
その手掴んだ。
『な、なんで、私なの?』
そう、なんで私を相手にするのか。それがわからない。ジンの容姿なら寄ってくる女はいるだろうし、それに、さっき匂った香水……。ベルモットともそういう関係なのだろうし……。
「……てめぇを抱きたくなった。それだけだ」
その顔は冗談を言ってるようには見えなかった。