第32章 忘れたい※
ピリッとゴムの袋を破く音がした。膝の裏に手が置かれてグッと持ち上げられる。触れるだけのキスが唇に落とされた。
「……力、抜いててくださいね」
入口にバーボンのソレがあてがわれる。力まないようにゆっくりと息を吐き出した。
『んっ……』
「息止めないで」
『う、ん……ああっ』
「……もう少しほぐした方がよかったですかね。痛くないですか?」
『だいじょうぶ……』
ナカが圧迫されて、正直ちょっと苦しい。しばらくセックスしないと狭くなるんだなぁ……なんて考える余裕はあるから、大丈夫という言葉も嘘じゃないよね?
『ひうっ……!』
「……すごく締まりましたね」
本当にゆっくりとナカを埋めてきたソレは、最後の最後で少し勢いをつけて奥にコツンと当たった。挿入による緩い刺激が続いていたせいもあって、急な快感は意識を軽く刈り取るくらい。
「前も思いましたけど、奥好きですよね」
浅い抽挿はコツン、コツンと奥を軽く突く。動きは激しいわけじゃないのに、連続して与えられる弱い刺激は、確実に私を快楽へ落としていく。
「これだけでこんなに締めてるなんて……この先持つか心配です」
『うるさいっ……う、ああっ!』
「素直じゃないのも可愛いですけど、気持ちいいならそう言ってくださいね……!」
膝裏の手が腰を掴んで、先程までとは打って変わって深い抽挿が始まる。入口近くのいい所も的確に抉ってくるから……ああ、もうむり。
『まって……もうだめぇっ…んあっ!』
「イクときはちゃんと言ってくださいね」
『んっ、イクからぁっ……ああっ!』
「いいですよ、好きなだけイって……」
『あああっ……!』
腰がビクンと震えて達した。頭の中に白く靄がかかるようで、身体の脱力感も指でイった時とは桁違い。
「……休んでる暇はないですよ」
『ひっ……あ、まって……!』
「待ちません。僕だって久しぶりに貴女を抱けて、抑えが利きそうにないですから……っ!」
『やっ、ああっ……バーボンまって……!』
そう言うとピタッと動きが止まった。
「……名前で呼んでくれませんか?」
『名前……えっと、とおる?』
「ははっ、予想以上にキますねっ……!」
『んああっ……!』
再び始まる抽挿に身体の奥が痺れる。もう……目の前の男の事しか頭にない。
「亜夜……好きですよ……」